その「普通」を疑え。『ちぎれた鎖と光の切れ端』は、あなたの時間を奪う価値があるか?【ネタバレなし】
こんにちは。「本の変人」こと、Low calm(ロウカーム)です。 美味しい紅茶を淹れて、今日も活字の海を泳いでいます。
私はあなたの時間を何よりも大切にしたい。 なぜなら、私自身が「本選びの失敗」で貴重な時間を溶かすことを、心から憎んでいるからです。
本業では約300人の会社で「ぼっち人事労務」として、日々パソコンと就業規則とにらめっこ。新卒1年目に難病(潰瘍性大腸炎)の宣告を受け、人生ハードモードが確定したあの日から、私にとって「時間の無駄」は最大の敵になりました。
年間150冊読む活字中毒者として、そして「職員の給与計算をミスったら人生が終わる」というプレッシャーからお金の勉強に走り、FP(ファイナンシャル・プランナー)2級まで取得した「お金と時間」の専門家(の端くれ)として、断言します。
あなたの貴重な時間を、この本に費やすべきか?
結論から申し上げましょう。 もしあなたが「スッキリする読書」や「心が温まる物語」を求めているなら、今すぐブラウザを閉じてください。この本は、あなたの時間を無駄にします。
しかし、もしあなたが、
- 人間のどうしようもない「業」や「闇」を覗き見たい
- 巧妙に張り巡らされた伏線にゾクゾクしたい
- 「普通」という名の仮面の下にある狂気に触れたい
と願う、私と同じ「イヤミス(読後感が悪いミステリー)」愛好家であるならば、この『ちぎれた鎖と光の切れ端』は、あなたの464ページ分の時間を捧げるに値する、「極上の絶望」です。
この記事では、私がなぜそう確信したのか、その理由を徹底的に解剖します。
【この記事でわかること】
- 年150冊読むイヤミス好きの「ぼっち人事」が選んだ、本書の「グッときた(ゾッとした)」箇所ベスト3
- あなたがこの本を読むべきか、読むべきでないか、時間の無駄を回避する判定基準
- ネタバレ一切なしで知る、物語の核心的な魅力
この記事を読み終える頃、あなたは「読む」か「読まない」か、明確な答えを手にしているはずです。あなたの「失敗しない一冊」選び、私がお手伝いします。
☕️ Low calmが選ぶ「グッときたところ」ベスト3
では早速、私の心が(悪い意味で)震えた箇所を、ランキング形式でご紹介します。もちろん*ネタバレは一切ありません。安心して、この沼に片足をつっこんでください。
【第3位】「普通」の仮面が剥がれる瞬間
第3位は、第一部(本書は二部構成です)の舞台となる孤島で描かれる、登場人物たちの「常識」が崩壊していく様です。
「信じていた日常が、非日常に塗り替えられる音」
あらすじを(超)簡潔に言えば、第1部は「復讐」を誓った主人公が、殺そうと思っていた相手たちと絶海の孤島(クローズド・サークル)に閉じ込められる話。
しかし、彼が手を下すより先に、仲間たちが一人、また一人と奇妙なルールで殺されていきます。
ここでゾクゾクするのは、殺人そのものではありません。 「昨日まで仲間だった人間」が、極限状態で見せるエゴイズムと、脆くも崩れ去る「普通」の仮面です。
これは、人事労務という仕事をしていると、嫌というほど目にする光景と重なります。
普段は「良い人」で通っている職員が、異動や評価、あるいは給与の査定といった「自分の利害」が絡んだ瞬間、目を疑うような言動に出る。まさに「昨日の友は今日の敵」。300人もいれば、本当に色々な人がいます。
この本で描かれるのは、まさにそれ。 「私たちは仲間だよね?」という薄っぺらい信頼が、死の恐怖を前にいかに簡単にちぎれていくか。その生々しい描写は、私の大好物である「イヤミス」の真骨頂でした。
「普通」ほど当てにならないものはない。 この本は、あなたの隣にいる「良い人」の仮面の下を、疑心暗鬼にさせる力を持っています。
【第2位】第1部と第2部を繋ぐ「鎖」の正体
第2位は、この物語の巧妙すぎる「構成」です。
「無関係な点が、最悪の線で結ばれた時」
第1部が「孤島の連続殺人」という古典的なミステリーなら、第2部は打って変わって、3年後の大阪が舞台。ゴミ処理場で働く女性・真莉愛が、バラバラ死体の「第一発見者」になってしまうところから始まります。
正直、第2部に入った直後、私は少し戸惑いました。 「あれ? さっきまでの話はどこへ?」と。
全く違う場所、全く違う登場人物。 この無関係に見える2つの事件が、徐々に「ある共通点」によって引き寄せられていく。その構成の妙こそ、本書の最大の魅力です。
私は難病を抱えていることもあり、「もし自分が急に働けなくなったら?」という不安からFPの資格を取りました。物事を「点」ではなく「線」で捉え、将来のリスクを逆算して今に備える。それがFPの思考法です。
この物語は、その真逆。 過去に起きた「点」(孤島の事件)が、忘れた頃に現在の「点」(大阪の事件)と結びつき、最悪の「線」となって登場人物たちに襲いかかります。
「あの時、あんなことがなければ」
そう、人事労務の仕事も同じです。 5年前に見過ごした小さな労務トラブル(点)が、今になって「未払い残業代請求」という巨大な負債(線)となって会社を襲う。
過去の因果が、忘れた頃に「復讐」しに来る。 この「ちぎれた鎖」が繋がった瞬間の絶望と鳥肌は、ぜひあなたの時間を使って体験してほしいと思います。
【第1位】人間の「業」と「執着」の深淵
そして、堂々の第1位。 それは、登場人物たちを突き動かす、常軌を逸した「執着」の深さです。
「愛と憎しみは、同じ根から生えている」
ネタバレになるため詳細は語れません。 ですが、この物語で起きる全ての事件の根底には、他者に対する異常なまでの「執着」があります。
それは時に「復讐」と呼ばれ、時に「愛」と呼ばれるかもしれません。 しかし、そのどちらも、「相手を自分の思い通りにしたい」という、人間の最も醜く、最も純粋な「業(ごう)」から生まれています。
人事の仕事をしていると、「なんでこの人は、こんな簡単なことが理解できないんだ?」とイライラすることがあります。逆に、職員から見れば「なんで人事は、現場の気持ちを分かってくれないんだ?」と思われているでしょう。
私たちは皆、「自分」というフィルターを通してしか世界を見られない。 自分の「普通」が、相手の「普通」だと思い込んでいる。
この物語の登場人物たちは、その「思い込み」が異常に強い。 「こうあるべきだ」という歪んだ正義感や独占欲が、鎖のように絡まり合い、悲劇の連鎖を生み出していきます。
「自分はこんな風にはならない」と、あなたは笑うでしょうか? 私は、笑えませんでした。
給与計算で1円でもミスをすれば、職員の生活が狂う。そのプレッシャーから来る私の「完璧でなければならない」という執着も、一歩間違えば彼らと同じ「業」の深淵に繋がっているのではないか。
『ちぎれた鎖と光の切れ端』というタイトル。 この「鎖」とは何か。「光」とは何を指すのか。
読み終えた時、あなたはこのタイトルの本当の意味を知り、人間の「業」の深さに打ちのめされることでしょう。私にとって、これ以上の「イヤミス」体験はありませんでした。
📖 この本を「読むべき人」と「避けるべき人」
私の「グッときた」ポイントでお分かりの通り、これは万人に勧められる本ではありません。あなたの貴重な時間を守るため、適性診断を明確に提示します。
🙆♀️ こんな人におすすめです(読む価値アリ)
- 「イヤミス」が大好物な人 『告白』や『悪の教典』のような、読後に嫌な気分(でも、それが快感)になる物語を求めている人。この本はあなたの期待を裏切りません。
- 人間の「闇」や「狂気」に強く惹かれる人 なぜ人は人を殺すのか。なぜ人はそこまで何かに執着できるのか。そのドロドロした心理描写を、安全な場所(読書)で楽しみたい人。
- 巧妙な「2部構成」ミステリーが好きな人 最初は無関係に見えた事件が、思わぬ形で繋がっていく。その「アハ体験」ならぬ「ゾワ体験」をしたい人。読み応え(464ページ)も抜群です。
🙅♀️ こんな人は時間の無駄です(今すぐ逃げて)
- 読後に「スカッとしたい」「感動したい」人 これは癒しの物語ではありません。むしろ、あなたの心に小さな(あるいは大きな)傷を残すタイプの物語です。優しい世界を求めているなら、回れ右。
- 登場人物に「共感」して読みたい人 ハッキリ言って、共感できる登場人物は(私基準では)ほぼ皆無です。誰もが歪み、誰もがエゴを抱えています。主人公に感情移入して楽しみたい人には向きません。
- テンポの良い「エンタメ」だけを求める人 第1部の孤島はスリリングですが、第2部は人間の内面をじっくりと描くパートも多いです。ジェットコースターのような展開だけを期待すると、中盤で少し退屈するかもしれません。(私はその「中だるみ」に見える部分こそが、闇の深さを描いていると思いますが)
✍️ 著者と本の詳細
ここで、この絶望的な傑作を生み出した著者と、本の基本情報をご紹介します。
著者:荒木あかね(あらき あかね)
- 1998年福岡県生まれ、九州大学文学部卒業。
- 2022年、『此の世の果ての殺人』で第68回江戸川乱歩賞を、史上最年少(23歳7ヵ月)で受賞しデビュー。
- デビュー作から一貫して、人間の心理の奥深くを抉るような作風が特徴で、本作は待望の江戸川乱歩賞受賞第一作(第2作目)となります。
- 「Z世代のアガサ・クリスティー」と呼ばれることもありますが、個人的にはもっとジメジメとした日本的な「業」を描く作家だと感じています。
本の詳細
- タイトル: ちぎれた鎖と光の切れ端
- 著者: 荒木あかね
- 出版社: 講談社
- 発売日: 2023年8月30日
- ページ数: 464ページ(単行本)
🗣️ 世間の口コミ
このブログでは、読者のリアルな声を届けるため、X(旧Twitter)から「良い口コミ」「悪い口コミ」を収集することを信条としています。
……が、今回はあえて省略します。
なぜなら、X上には「面白かった!」という薄い感想から、核心に触れかねない(あるいは、明確にネタバレしている)感想まで、玉石混交の情報が溢れかえっていたからです。
あなたの貴重な時間を、ノイズの多い情報精査で無駄にさせたくない。
Amazonや楽天のレビューを見れば、誰もが同じ情報を得られます。ですが、このブログの価値は、私、Low calmという「人事労務でFP持ちのイヤミス変人」のフィルターを通した、正直な評価です。
世間の評価がどうであれ、私自身が「時間の無駄ではなかった」と確信した。 今は、それだけを信じていただければ幸いです。
💡 まとめ:その「鎖」は、本当にちぎれていますか?
最後に、この本が私に何をもたらしたか。
私は人事労務として、毎日「規則」という名の鎖を扱っています。就業規則、給与規定、社会保険の手続き。これらは会社という組織を守り、同時に職員を縛る「鎖」です。
『ちぎれた鎖と光の切れ端』を読み終えた時、私は思いました。 私たちが「常識」や「普通」と呼んでいるものも、実は目に見えない「鎖」なのではないか、と。
【本書の核心(Low calm的解釈)】
- 第3位で触れた「普通」という仮面。
- 第2位で触れた「過去」という因果。
- 第1位で触れた「執着」という業。
これら全てが、登場人物たちを縛る「鎖」です。 そして彼らは、その鎖から逃れようともがき、あるいは鎖をちぎった(と思い込んだ)結果、さらなる悲劇へと転落していきます。
この本は、ミステリーであると同時に、「あなたの足元にある“当たり前”を疑え」と突きつけてくる、強烈な問いかけです。
あなたへのアクションプラン
もし、この記事を読んで、あなたの心の奥底にある「闇(イヤミス愛)」が疼いたなら。
まずは、あなたの日常にある「鎖」を一つ、意識してみてください。
- 「会社員だから、こうすべきだ」
- 「みんながやっているから、自分も」
- 「あの人が許せない」
それは、本当にあなたを守る「鎖」ですか? それとも、あなたを縛る「鎖」ですか?
この本は、その「鎖」がちぎれた時に見える「光(あるいは絶望)」を、あなたに教えてくれるはずです。
あなたの「大切な時間」を、この極上の絶望に捧げてみることを、私、Low calmは強く(イヤミス好き限定で)推奨します。

