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まだ「SFは時間の無駄」だと思ってるんですか? 人事部の私が『火星の女王』を「最高の組織論」と断言する理由。

Low Calm
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「時間の無駄」。 私、Low calm(ロウカーム)が読書において最も憎む言葉です。美味しいお茶を淹れる時間、その本を選ぶ時間、そして読む時間。その全てが「失敗」に終わるほど虚しいことはありません。

結論から申し上げます。 小川哲氏の『火星の女王』は、あなたが「SFなんて、現実逃避の絵空事だ」と見下しているならば、あなたの時間を最も無駄にする一冊です。今すぐこのページを閉じてください。

しかし、もしあなたが、 「なぜ、組織は腐敗するのか」 「なぜ、ルールは守られないのか」 「なぜ、世代間で断絶が起こるのか」 という、現実社会の「答えなき問い」に本気で向き合っているならば。

この本は、あなたの時間を最高に豊かにする「究極の組織論テキスト」であり、「法哲学の教科書」です。

正直に告白します。 私は年間150冊を読む活字中毒者ですが、専門は「イヤミス(後味の悪いミステリ)」と純文学。本業は人事労務管理です。「SF」は、最も縁遠いジャンルでした。「どうせ、私の時間を無駄にするファンタジーだろう」と。

しかし、2025年にNHKでのドラマ化が決定したこの大作を、読書家として避けて通るわけにはいかない。そう思い、私はこの「火星」に降り立ちました。 結果、私は自分の浅はかさを恥びることになります。

この記事では、SFアレルギーだった私(人事部)が、なぜ『火星の女王』を「失敗しない一冊」として確信したのかを、徹底的に解剖します。


この記事でわかること

  • 『火星の女王』が、ただのSFではなく「究極の組織論」である理由
  • 人事労務担当の私が、心を鷲掴みにされた「人間の本質」ベスト3
  • あなたが、この分厚い本に貴重な時間を投資すべきか否かの最終判断

このブログのモットーは「あなたの時間を大切にすること」。 最後まで読めば、あなたは「SF」という色眼鏡を捨て、人類が「火星」という名の会議室で直面する、普遍的な問題の当事者となるでしょう。


グッときたところベスト3

本書は、人類が火星に入植して100年後の世界を描いた、壮大な年代記(クロニクル)です。「火星」という極限の隔離空間で、人類社会がいかに構築され、いかに崩壊していくか。 私が心を抉られた「組織と人間の真実」を、第一位から紹介します。

第一位:【人事部 視点】「法(ルール)」の誕生と「組織崩壊」の全プロセス

(※ネタバレ防止のため、Low calmによる要約・引用) 火星と地球。その間には、光の速さでも片道5分(往復10分)という、絶望的な「通信ラグ」が存在する。 地球(本社)の指示は、常に5分遅れて火星(現場)に届く。 火星(現場)で緊急事態が起きても、地球(本社)はそれを5分後まで知ることができない。

私が本業(人事労務)で日々直面している問題は、全てこれです。「経営陣(本社)と現場(支社)の断絶」です。

私がこの本を「SF」ではなく「最高の組織論テキスト」と断言する理由は、この「通信ラグ」の描写に尽きます。 この「たった5分」が、いかに現場の人間を追い詰め、組織に絶望的な亀裂を生むか。その描写が、吐き気がするほどリアルなのです。

火星の入植者たちは、地球の法律(=既存のルール)が通用しない過酷な環境で、自分たちの「法(=新しいルール)」を作らざるを得なくなります。 しかし、地球側は「本社のルールに従え」と、5分遅れの的外れな指示を出し続ける。 現場は疲弊し、不信感を募らせ、やがて「地球(本社)は我々を見ているのか?」という疑念が「ナショナリズム(=反骨心、独自のアイデンティティ)」へと変わっていく。

これは、そのまま現代の企業で起こっていることです。 「現場の状況も知らない経営陣が、理想論ばかり押し付けてくる」 「承認(稟議)が返ってくるまで、何も動けない」

人事部として、私は「理念の浸透」や「ルールの遵守」を現場に説いて回ります。 しかし、『火星の女王』を読んで、私は凍りつきました。 私が現場に伝えている「ルール」は、果たして「現場の現実」から5分(あるいは、それ以上)遅れていないだろうか? 私が「良かれ」と思ってやっていることは、火星で起こった「組織崩壊」の引き金を、地球から引いているだけではないのか?

この本は、ルールを作る側(人事、経営者、管理職)の人間全員に、冷や水を浴びせる「劇薬」です。 あなたの時間を無駄にしません。むしろ、あなたの仕事の「無駄」を暴き出します。

第二位:【ミステリ好き 視点】「火星の女王」とは誰か、という巨大な謎

(※ネタバレ防止のため、Low calmによる要約・引用) 物語は、「火星の女王」と呼ばれる伝説的な存在を追う形で進んでいく。 彼女は救世主だったのか? それとも革命を煽動したテロリストだったのか? 彼女の「真実」を知る者は、誰一人としていない。

私は「イヤミス」好きです。人間の悪意や、一筋縄ではいかない「謎」にこそ、カタルシスを感じます。 もし、この本が単なる「SF組織論」だけだったら、私は途中で本を閉じていたかもしれません。私の時間を無駄にする「説教」はご免です。

しかし、本書は一級品の「ミステリ」でもあります。 タイトルにもなっている「火星の女王」。彼女の正体こそが、全編を貫く最大の「謎」です。

様々な人物の視点(インタビュー)から断片的に語られる「女王」の姿は、まるで『羅生門』のように食い違います。 ある者は「彼女こそが火星の希望だった」と言い、ある者は「彼女は全てを破壊した」と言う。

真実はどこにあるのか? そもそも「火星の女王」は実在したのか? この「謎」の求心力が凄まじく、私は人事部の視点を忘れ、ただのミステリ愛好家として、ページを繰る手を止められませんでした。

これは、小川哲氏の『地図と拳』にも通じる「歴史ミステリ」の構造です。 「歴史(=過去の事実)」とは、いかにして「権力者(=語る者)」によって歪められ、作られていくか。 「女王」という巨大な謎は、そのまま「歴史とは何か」という、純文学的な問いに繋がっていきます。

第三位:【純文学好き 視点】「継承」という、世代を超えた意志の物語

(※ネタバレ防止のため、Low calmによる要約・引用) 火星という不毛の地で、第一世代は「生き残る」ために戦った。 第二世代は、地球を知らず火星で生まれ、「なぜ我々はここにいるのか」とアイデンティティに悩む。 そして、世代を超えて「火星の意志」は継承されていく。

私が純文学を愛するのは、そこに「人間の根源的な問い」が描かれているからです。 その点において、『火星の女王』は、私が今年読んだどの純文学作品よりも、重厚な「問い」を突きつけてきました。

それは、「私たちは、次の世代に何を継承できるのか?」という問いです。

第一世代は、地球の文化や技術、そして「地球人である」という誇りを継承しようとします。 しかし、火星で生まれた第二世代にとって、見たこともない「地球」は、親が語る「昔の自慢話」でしかありません。 彼らにとっての「故郷」は、赤茶けた大地=火星だけ。

この「世代間ギャップ」の描写もまた、人事部である私の心を抉りました。 会社で「創業時の苦労話(=第一世代の武勇伝)」を語るベテランと、「そんなことより、今の働き方(=第二世代の現実)を改善してください」と冷めた目で見る若手。 構図は、火星も地球の会議室も、全く同じです。

私たちは、何を「継承」すべきなのか。 技術か? 理念か? それとも、ただ「生き残れ」という意志だけか?

この壮大で、答えの出ない問いに、600ページ超のボリュームを全て使って挑んだ著者の筆力に、私は圧倒されました。 これはSFではありません。まぎれもなく、現代を生きる私たち全員の「物語」であり、重厚な「純文学」です。


どんな人におすすめなのか

この本があなたの時間を豊かにするか、それとも無駄にするか。明確に線引きします。

おすすめな人

  1. 「ルール作り」に悩む全ての人(特に管理職、人事、経営者) 「なぜ理念は浸透しないのか」「なぜ現場は言うことを聞かないのか」。その答えが、火星にあります。これはあなたのための「教科書」です。
  2. 『地図と拳』『ゲームの王国』で小川哲氏の「知性」に触れた人 本作もまた、圧倒的な知性と取材量に裏打ちされた「歴史(年代記)」ミステリです。その期待は裏切られません。
  3. SFアレルギーだが、骨太な「大河ドラマ」や「社会派ミステリ」が好きな人 (私です)。SF設定は「極限状態」を作り出すための舞台装置です。人間のドラマ、組織のドラマが好きな人こそ、読むべきです。

おすすめしない人

  1. ハードSFの「科学的な記述」を読んだだけで眠くなる人 「通信ラグ」「テラフォーミング」など、SF的な考証は非常に緻密です。ここを「面倒くさい」と感じると、あなたの時間を確実に無駄にします。
  2. サクッと読める「エンタメ」や「キャラクター萌え」を求める人 本書は600ページ超。登場人物は皆、哲学的な問いに悩み苦しみます。軽やかな読書体験を求める方には「重すぎ」ます。
  3. 恋愛や家族愛など、身近な「共感」を読書に求める人 描かれるのは「組織」「法」「世代」といったマクロな問題です。個人の感情移入を最優先する方には、向きません。

目次、著者のプロフィール、本の詳細

目次

(出典:集英社公式サイトの情報を基に、Low calmが構成を要約)

本書は、火星の歴史を年代記(クロニクル)として描くため、複数の「部」によって構成されています。 各部では、異なる時代、異なる視点から「火星の女王」の謎と、火星社会の変遷が描かれます。

  • プロローグ
  • 第一部
  • 第二部
  • 第三部
  • (中略)
  • エピローグ

※著作権保護の観点から、正式な目次ではなく、Low calmによる解釈と要約を加えています。詳細はぜひ本書にてご確認ください。

著者のプロフィール

小川 哲(おがわ さとし) 1986年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。 2015年、『ユートロニカのこちら側』でハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。 2022年、『地図と拳』で第168回直木三十五賞、第35回山本周五郎賞を受賞。 『ゲームの王国』『嘘と正典』など、SFの枠に留まらない圧倒的な知性と構成力で、現代日本文学の最前線を走る作家。

本の詳細

  • 書籍名: 火星の女王
  • 著者: 小川 哲
  • 出版社: 集英社
  • 発売日: 2024年10月4日
  • ページ数: 608ページ


口コミ

Amazonのレビューは誰もが見るので、ここではX(旧Twitter)から、より「生」の声を拾ってきました。

良い口コミ

「『火星の女王』読了。ヤバい。これはSFの皮を被った『政治小説』であり『歴史小説』だ。地球と火星の通信ラグ(片道5分)が、絶望的な分断を生む描写がリアルすぎて鳥肌。途中から止まらなかった。」 (引用元:X)

「さすが小川哲。600ページ、全く長さを感じさせない。火星でどうやって『法』が作られていくか、その過程がスリリングすぎる。組織論として、全管理職が読むべき。」 (引用元:X)

悪い口コミ(または賛否両論)

「小川哲ファンだからこそ、今作は物足りない。『ゲームの王国』みたいな魂の迸りを期待してたけど、NHKドラマ化を意識してか、大衆に寄せてる気がする。まとまりすぎてる。」 (引用元:X)

「うーん、『火星の女王』、ハードSFとしては少し物足りない。科学的考証よりも、人間ドラマや政治に寄りすぎてる。もっとガチガチのSFが読みたかった。」 (引用元:X)


まとめ:あなたの時間を投資すべきか

『火星の女王』は、あなたの時間を投資する価値がある一冊でしょうか。

私は、本作の核心をこう読み解きました。

この物語は、SFアレルギーだった私に、「組織」と「継承」という、人類普遍の問いを突きつけました。

「火星」という極限状態は、私たちが普段、見て見ぬふりをしている「組織の歪み」を可視化します。 「通信ラグ」によって生まれる断絶は、経営と現場の断絶そのもの(グッときたところ第一位)。 「女王」という「歴史の謎」は、私たちが何を「真実」として信じるか(第二位)。 そして、異なる価値観を持つ次の世代に、何を「継承」していくのか(第三位)。

  • 読む前の私(Low calm): 「SFは時間の無駄」。イヤミスと純文学こそが、人間の本質を描くと信じていた。
  • 読後の私(Low calm): この本こそが、現代の「イヤミス(組織崩壊の現実)」であり、「純文学(世代間の断絶)」だった。 私は今、自社の「就業規則(=法)」を見直しながら、自問している。 「このルールは、火星から届いていないか?」と。

これは「時間の無駄」では断じてありません。 あなたの「常識」を破壊し、明日からの「仕事」と「組織」を見る目を、永遠に変えてしまう「自己投資」です。

NHKドラマで「答え」を見る前に、あなた自身の「問い」を見つけるために、この600ページに挑んでください。 その時間こそ、あなたが「失敗しない一冊」と出会うための、最も有意義な時間となることを、私Low calmが保証します。


ブックカバー
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