【書評】『JUST KEEP BUYING』レビュー|センスも予測も不要。データが導き出した「最適解」に、ただ従うだけの静かな投資論
窓の外はあいにくの雨だ。湿った空気には、温かいアールグレイがよく合う。
私は普段、300人規模の企業で給与計算を担当している。毎月、社員たちの給与明細を確定させるたびに、胸の奥で小さなため息が出るのを止められない。昇給なんてものはすずめの涙ほどで手取り額は横ばいだ。どれだけ真面目に働いても、口座に残る金額はインフレの速度に追いついていない。
「将来が不安だ」。そう感じるのは、あなたの心が弱いからではない。数字を見れば、それが極めて正常な危機感であることがわかるからだ。
今日紹介する『JUST KEEP BUYING』は、そんな閉塞感の中にいる私たちが、唯一「確実」にコントロールできる行動指針を示してくれる。魔法のような儲け話ではない。膨大なデータが導き出した、残酷なほどにシンプルな「事実」だ。
結論:この記事は「読む価値」ある?
- こんな気分向け
「投資はギャンブルのようで怖い」「いつ始めればいいか分からず、ずっと現金のままだ」という、慎重すぎて動けない時。 - 読むと得られるもの
「いつ買うか」「何を売るか」といった悩みからの解放。そして、今日から投資を始めるための論理的な自信。 - Low calmの判定
「購入推奨(手元に置き、迷った時に読み返すバイブルとして)」
Low calmが「グッときた」ところベスト3
FPとして、そして難病を経験し「時間」の価値を痛感している身として、本書の主張は痛いほど刺さった。特に印象に残った3点を紹介する。
【第1位】「神様」でも勝てない積立投資

本書の中で最も衝撃的だったのは、完璧なタイミングで株を買える「神様」と、何も考えずに毎月定額を積み立てる一般人を比較したシミュレーションだ。
結論から言えば、底値(最安値)を待ち続けてスポット購入する神様は、毎月積立投資をする一般人に負けることが多い。 これは投資において「タイミングを見極める能力」よりも、市場に居続ける時間の長さこそが決定的な要因であることを証明している。チャートを見て悩み、買い時を探っている今の時間は、FPの視点から言えば「機会損失」以外の何物でもないと言わざるを得ない。
【第2位】貯金よりも「人的資本」への投資

「節約して投資資金を作れ」というありふれたアドバイスに対し、著者は一部懐疑的だ。 低収入の段階で無理な節約をするよりも、自分のスキル(人的資本)を高めて入金力を上げる方が、最終的な資産は増える。
これは人事担当として強く同意する。スキルアップにお金を使い、昇給や転職で種銭を増やす。そしてその種銭を淡々と投資に回す。このサイクルこそが、資本主義社会での最も合理的な攻略法だ。
【第3位】「現金のまま」が最大のリスク

私たちは「暴落」を恐れる。しかし本書は、インフレによって現金の価値が目減りし続けることの方が、長期的には遥かに大きなリスクだとデータを突きつける。 何もしないことは、安全策ではなく「緩やかな自滅」である。この事実に気づけるかどうかが、10年後の景色を変えるだろう。
どんな人におすすめなのか
✅ おすすめな人(時間を投資すべき人)
- 論理的な説明がないと納得できない、理系思考の人。
- 日々の株価チェックに時間を奪われたくない忙しい会社員。
- 「損をしたくない」という気持ちが強すぎて、一歩目が踏み出せない人。
🚫 おすすめしない人(ミスマッチの可能性)
- 短期間で一攫千金を狙いたいギャンブラー気質の人。
- すでに独自の投資手法で成功しており、他人の意見を必要としない人。
紙 or 電子どの形式で「時間」を使うべきか?
判定:紙の書籍(◎)
本書には多数のグラフやデータが登場する。電子書籍では図表のページを行き来するのが煩わしく、理解の妨げになる可能性がある。 デスクの手に届く場所に置き、「暴落が起きて不安になった時」にパラパラと読み返してメンタルを安定させる。そんな使い方が適している。
まとめ:あなたの「時間」を投資する価値はあるか
正直に言えば、この本は「退屈」かもしれない。ドラマチックな売買テクニックは一切書かれていないからだ。 しかし、その退屈さこそが真実だ。ただひたすらに、買い続けること(JUST KEEP BUYING)。それが私たちが資本主義の恩恵を受けるための入場券となる。
読書はインプットだが、資産形成は「アクション」だ。 本を読んで「なるほど」と頷くだけでは、あなたの資産は1円も増えない。本書のロジックに納得したのであれば、次にすべきことは書店に行くことではなく、自動的に買い続ける「仕組み」を作ることだ。
私は現在、この「買い続ける」仕組みを楽天証券で作っている。 理由は単純だ。楽天カードや楽天キャッシュでの積立によりポイントが貯まるからだ。投資の利回りはコントロールできないが、ポイント還元という確定された利益を取りこぼさないこと。それが、FPとして提案できる数少ない「確実な勝率アップ」の方法だからだ。
それに、画面が見やすく操作に迷う時間が少ない。浮いた時間は、紅茶を淹れて本を読む時間に使えばいい。
【最終案内】あなたの「時間」を豊かにする一冊
Low calmの備忘録:なぜ楽天証券なのか
- 合理性: 投資信託の保有や積立でポイントが貯まる(複利効果の底上げ)。
- 効率性: サイト設計が直感的で、管理に脳のリソースを割かなくて済む。
- 結論: 「Just Keep Buying」を実践する舞台として、これほど適した環境はない。


