『変な家2』は前作超えか? 年150冊の活字中毒者が「時間の無駄」か判定
さて、本日ご紹介するのは、社会現象にもなった『変な家』の続編、雨穴(うけつ)さんの『変な家2 〜11の間取り図〜』です。
前作は映画化もされ、その不気味な間取り図とゾクゾクする展開が大きな話題となりました。 正直なところ、私(Low calm)は前作を読んだとき、「面白い。だが、結末はややオカルトに振り切ったな」と感じ、少しだけ物足りなさを覚えていたのも事実です。
だからこそ、続編である『変な家2』を手に取るとき、こう思いました。 「これは、私の大切な時間を費やす価値があるのか?」 「また同じパターンの、“時間の無駄” にならないか?」
年間150冊の本を読む私にとって、時間は命です。 特に、私の大好きな「イヤミス(読んだ後に嫌な気分になるミステリ)」とは異なる、単なるホラーだった場合、がっかりしてしまいます。
しかし、結論から申し上げましょう。 『変な家2』は、前作のハードルを軽々と超え、見事な「間取りミステリ」として昇華されていました。
この記事では、前作ファンはもちろん、「2から読んでも大丈夫?」と迷っている方にも向けて、なぜ本書が「読む価値のある一冊」なのかを、ネタバレ一切なしで徹底解説します。
📌 この記事でわかること
- 『変な家2』が前作と決定的に違う「面白さ」の正体
 - 活字中毒者の私が「グッときた」ポイント
 - あなたが本書を読むべきかどうかの判定
 
📌 本記事の信頼性
- 筆者(Low calm)は年間約150冊を読む活字中毒者です。
 - 特にイヤミスと純文学を好み、ミステリの「構成」と「動機」にはうるさい方だと自負しています。
 - 普段は人事労務管理の仕事をしており、物事の「なぜ?」をロジカルに突き詰める癖があります。
 
📖 私が『変な家2』で「グッときたところ」ベスト3
本書は、タイトル通り「11の奇妙な間取り図」を巡る物語が、一見独立した短編のように語られていきます。しかし、それらが最後にとんでもない形で繋がっていくのです。 私が特に「これはやられた!」と唸ったポイントを3つ、厳選してご紹介します。
🥇 1位:点と点が線になる「構成の巧みさ」
まず、本書の構成に脱帽しました。 11の「変な家」が次々と紹介されます。「行先のない廊下」「闇をはぐくむ家」「ネズミ捕りの家」……。
最初は、前作と同じような「不気味な間取り図のオムニバス怪談」かと思って読み進めます。一つひとつのエピソードも、それ単体でゾクッとする怖さがあります。
しかし、中盤を過ぎたあたりから、まったく無関係だと思っていた家々の間に、奇妙な共通項が浮かび上がってくるのです。
「あれ? この話、さっきの話と繋がっている?」
この感覚がたまりません。 バラバラだったパズルのピースが、ある瞬間からピタリ、ピタリとハマり始め、巨大な一枚の「絵」が姿を現す。 その絵こそが、組織的で、計画的で、おぞましい「人間の悪意」なのです。
私の好きな「イヤミス」は、突発的な恐怖ではなく、計算された悪意がじわじわと滲み出てくるものが多いです。 本書はまさにそれ。11の点が線となり、やがて「面」として読者に襲い掛かってくる。この構成力は、前作を遥かに凌駕していると感じました。
🥈 2位:人為的な「動機」の不気味さ
私が前作で感じた物足りなさは、「結末がオカルト的だった」ことです。それはそれで面白いのですが、ミステリファンとしては、やはり「なぜ、そうなったのか」というロジカルな動機が知りたい。
その点、『変な家2』は完璧でした。 この物語の恐怖の根源は、幽霊や超常現象ではありません。すべて「人間」です。
詳細はネタバレになるため伏せますが、11の家を繋ぐキーワードは、ある種の「信仰」や「歪んだ願い」です。 普段、会社員として人事労務の仕事をしていると、人間の「思い込み」や「執着」が、いかに恐ろしい事態を引き起こすかを目の当たりにすることがあります。
本書で描かれる動機は、まさにその延長線上にある、「理解はできるが、共感は到底できない」不気味なリアリティに満ちています。 だからこそ、読み終えた後に背筋が凍るのです。 「もしかしたら、私の隣の家も…」と。 この「地続きの恐怖」こそ、本作最大の魅力です。
🥉 3位:すべてが氷解する「栗原の推理」パート
本書も、前作に引き続き設計士の栗原さんが登場し、間取り図の謎を解き明かしていきます。 そして、最終章「栗原の推理」は、まさに圧巻の一言。
11の奇妙な間取り図に隠された、恐ろしい「ルール」。 なぜ、そんな奇妙な改築が行われたのか。 いったい、誰が、何のために。
それらの謎が、栗原さんの冷静沈着な分析によって、すべてロジカルに解き明かされていきます。
この最終章は、ミステリファンにとって最高の「ご褒美」です。 「あぁ、あの時のあの描写は、このためだったのか!」 「あの不可解な間取りには、そんな意味が!」 と、何度も膝を打ちました。
単なる「答え合わせ」ではなく、そこに至るまでの過程を丁寧に積み上げる、極上のミステリ・ロジックが展開されます。 このカタルシスを味わうためだけに、本書を読む価値があると断言できます。
👪 どんな人におすすめなのか
この本が「失敗しない一冊」となるかどうか、私なりの基準で仕分けしました。
✅ おすすめな人 3選
- 前作『変な家』の結末に、少し物足りなさを感じた人 前作のオカルト的な結末よりも、よりロジカルで骨太なミステリを求めている方。本書はあなたの期待に応えてくれます。
 - 短編の読みやすさと、長編の重厚感を両立したい人 序盤は11の独立した物語としてサクサク読めます。しかし、それらがすべて繋がる後半は、長編ミステリとしての読み応えが抜群です。(実際、400ページ超えと物理的にも重厚です)
 - オカルトホラーより「人間の怖さ」を味わいたいミステリファン 幽霊よりも、人間の狂気や執念、歪んだ動機にこそ恐怖を感じる方。私のような「イヤミス」好きには特におすすめです。
 
❌ おすすめしない人 3選
- 間取り図や時系列の整理が面倒に感じる人 本書は11もの間取り図が登場し、それらが複雑に絡み合います。「この家は誰が住んでいて…」と考えるのが苦手な方は、途中で混乱するかもしれません。
 - 読後感に「絶対的なスッキリ」を求める人 ミステリとしての謎は解明されますが、物語の根底にある「動機」があまりにもおぞましいため、読後は「面白かった…けど、気分が重い…」となります。爽快な読書体験を求める方には向きません。
 - 前作の登場人物(栗原さん以外)の「その後」が知りたい人 本書はあくまで「続編」であり、前作の直接的な後日談ではありません。栗原さんは登場しますが、前作の主人公たちのその後を期待して読むと肩透かしを食らいます。
 
📚 目次、著者のプロフィール、本の詳細
本書の購入を検討されている方のために、基本的な情報をまとめます。
目次
- 行先のない廊下
 - 闇をはぐくむ家
 - 林の中の水車小屋
 - ネズミ捕りの家
 - そこにあった事故物件
 - 再生の館
 - おじさんの家
 - 部屋をつなぐ糸電話
 - 殺人現場へ向かう足音
 - 逃げられないアパート
 - 一度だけ現れた部屋
 - 栗原の推理
 
(出典:飛鳥新社 公式サイト 『変な家2 〜11の間取り図〜』 https://www.asukashinsha.co.jp/bookinfo/9784864109826.php)
著者プロフィール
雨穴(うけつ)
インターネットを中心に活動するホラー作家。ウェブライター、YouTuberとしても活動している。 (本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです – 楽天ブックスより引用・一部改変)
本名、素顔、地声などが非公開の覆面作家として知られています。 デビュー作『変な家』のほか、『変な絵』など、著作はいずれもベストセラーとなっています。
本の詳細
- タイトル: 『変な家2 〜11の間取り図〜』
 - 著者: 雨穴
 - 出版社: 飛鳥新社
 - 発売日: 2023年12月15日
 - ページ数: 440ページ
 
🗣️ 世間の口コミ(Twitterより)
Amazonのレビューは誰もが見るので、ここでは**Twitter(現 X)**から、より生々しい意見を集めてみました。
良い口コミ
「『変な家2』、1より断然面白かった。11の家が最後全部つながるのが圧巻。パズルのピースがハマるみたいで最高だった。これはミステリとして秀逸。」
「1作目のオカルト感が苦手だったけど、2はしっかりミステリで大満足。伏線回収が見事すぎる。雨穴さん、構成力が格段に上がってる。」
「怖かった…。ホラーというより、人間の業というか、真相がとにかく重くて怖い。でも、栗原さんの推理パートで全部繋がった時は鳥肌が立った。」
悪い(または賛否両論の)口コミ
「面白かったけど、真相が重い…。読後感がちょっとモヤモヤする。スッキリしたい人には向かないかも。」
「間取り図が11個も出てきて、途中ちょっと混乱した。相関図書きながらじゃないと無理かも。一気読み推奨。」
「前作のキャラは栗原さんしか出ないから、そこは残念。でも、話としては2の方が好き。」
総評として、**「1作目よりミステリとして面白い」「構成がすごい」という絶賛の声が多い一方で、「内容が重い」「複雑で疲れた」**という意見も見られました。 まさに、私が感じた通りの反応です。
✍️ まとめ:『変な家2』は、あなたの時間を費やす価値があるか
最後に、この記事の総まとめです。
私が「グッときたところベスト3」を繋げてみましょう。
本書は、一見独立した11の不気味な間取り図(ベスト1)から始まります。しかし、それらはすべて、人間の歪んだ業と執念(ベスト2)という一本のおぞましい糸によって繋がっていたのです。そして、そのすべての謎を、設計士・栗原氏が鮮やかなロジックで解き明かしていきます(ベスト3)。
読む前の私(Low calm)は、「また間取り図か。前作のヒットに乗じた二番煎じではないか?」と、かなり懐疑的でした。 しかし、読み終えた今、その考えは完全に覆されました。
「ここまで巧みな構成の『人間ホラーミステリ』は久しぶりだ」
この一冊は、単なるホラーではなく、人間の心理の深淵を覗き込むような、質の高いミステリ作品です。
もしあなたが、前作で満足しきれなかったり、流行りの本だからと敬遠していたり、あるいは骨太なミステリを求めているのなら。
『変な家2 〜11の間取り図〜』は、あなたの貴重な時間を費やす価値が十分すぎるほどある一冊です。
ぜひ、この11の家を巡る「悪夢のパズル」に、あなたも挑戦してみてください。 きっと、その構成力と人間の怖さに、戦慄することになるでしょう。




