【書評】『DIE WITH ZERO』レビュー|「老後の安心」のために、今日の「感動」を殺していないか?
こんにちは、Low calmです。 窓を開けると、少し冷たい風がカーテンを揺らしました。熱いダージリンで指先を温めながら、今日は少し「不都合な真実」についてお話ししようと思います。
以前、このブログで『LIFE SHIFT』を紹介しました。人生100年時代、長く生きるために「無形資産」や「スキル」を蓄えよう、という話です。 多くの読者の方が、将来のために貯金をし、副業を検討し、真面目に備えていることでしょう。
けれど、ふと立ち止まってこう思ったことはありませんか? 「今の楽しみを我慢して備え続けた結果、一番お金持ちになった日が『死ぬ日』だったらどうしよう?」
人事として多くの退職者を見送ってきた経験、そして私自身が20代で難病になり「健康は永遠ではない」と悟った経験から言わせてください。 ただ盲目的に貯めることは、リスクです。
今回ご紹介するのは、人生の「終わり」から逆算し、富の最大化ではなく人生の喜びの最大化を説く一冊、『DIE WITH ZERO(ダイ・ウィズ・ゼロ)』です。
結論:この記事は「読む価値」ある?
- こんな気分向け
「将来が不安で、お金を使うことに罪悪感がある」「今の仕事に追われて、やりたいことを先送りにしている」 - 読むと得られるもの
死ぬ時に後悔しないための「お金と時間の使い方の公式」と、今すぐ経験にお金を使う勇気。 - Low calmの判定
「『LIFE SHIFT』とセットで読むべき”解毒剤”。真面目な人ほど、優先度は極めて高い」

Low calmが「グッときた」ところベスト3
『LIFE SHIFT』が「生き抜くための盾」なら、この本は「人生を味わい尽くすための剣」です。FPの視点で見ても、非常に合理的かつ感情に訴えるロジックでした。
【第1位】思い出は「配当」を生み続ける

著者は、経験にお金を使うことを「投資」と定義しています。なぜなら、経験は記憶の配当(メモリー・ディビデンド)を生むからです。
例えば、無理をしてでも20代で行った貧乏旅行の記憶は、30代、40代になっても会話のネタになり、心を温め続けます。 株の配当と同じで、早く経験すればするほど、死ぬまでに受け取れる「精神的な配当」の総量は増える。 「老後のために」と楽しみを70歳まで先送りすることは、この「配当」をすべてドブに捨てる行為だという指摘には、ハッとさせられました。
【第2位】健康という「減価償却資産」

人事労務の現場にいると痛感しますが、60歳、70歳になってから「世界一周したい」と言っても、膝が痛くて歩けない、というケースは珍しくありません。 お金は増やせますが、身体機能は加齢とともに確実に低下します。 本書では「タイムバケット(時間のバケツ)」という概念を使い、「スキーをするなら40代まで」「ハイキングなら60代まで」と、年齢ごとにできる経験を割り振ることを推奨しています。
お金があっても、健康がなければ経験は買えない。 この当たり前すぎる事実を、私たちはつい忘れてしまいます。
【第3位】ゼロで死ぬことの「合理性」

タイトル通り、死ぬ瞬間に資産をゼロにすることを目指すべきだという主張です。 「そんな無茶な」と思うかもしれません。しかし、死んだ後に残ったお金は、あなたがそのお金を得るために費やした「労働時間(=命)」が無駄だったことを意味します。 子供への相続も、死んでから(子供が60代になってから)渡すのではなく、子供が最もお金を必要としている20代〜30代のうちに譲るべきだという考え方は、FPとしても非常に理にかなっていると感じました。
どんな人におすすめなのか
✅ おすすめな人(時間を投資すべき人)
- 『LIFE SHIFT』を読んで、将来への備えに少し疲れを感じている人。
- 「アリとキリギリス」の「アリ」のように生きてきた、真面目な努力家。
- 節約が趣味になり、自分への投資を渋ってしまう人。
🚫 おすすめしない人(ミスマッチの可能性)
- すでに宵越しの金は持たない主義の「キリギリス」タイプの人。(これ以上読むと破産します)
- 今日明日の生活費に困っている状況の人。(まずは守りを固めるべきです)
紙 or 電子どの形式で「時間」を使うべきか?
判定:〇 電子書籍(Kindle等)
『LIFE SHIFT』ほど図解を行ったり来たりする必要はありません。移動中や寝る前の隙間時間に、心のマインドセットを変えるために読むのに適しています。 ただし、巻末の「寿命計算」や「タイムバケット」のワークをしっかりやりたい場合は、紙で手元に置くのも良いでしょう。
世間の口コミ(Xから)
「DIE WITH ZERO」読了📘
— hachi🤍🇯🇵 (@hachikoubaby) December 5, 2025
“人生で一番大切なのは思い出を作ること。”
資産を子どもに贈与するなら子の一番必要な、お金が意味ある使い方のできるタイミングであげたほうが有意義であるとの視点が盲点。遺産相続で…だと子も50、60とかお金持ってる時期。そうじゃなく30代とかそう言う時に! pic.twitter.com/qKUQSBmHPi
まとめ:あなたの「時間」を投資する価値はあるか
前回の記事で、動画編集やWebデザインなどのスキルを身につけ、資産を増やす重要性をお話ししました。 しかし、その増やしたお金は何のためにあるのでしょうか? 通帳の数字を眺めて安心するためではありません。 そのお金で、大切な人と美味しい紅茶を飲んだり、見たことのない景色を見に行ったりするためです。
『LIFE SHIFT』で守りを固め、『DIE WITH ZERO』で攻めに転じる。 この2冊を両輪とすることで、初めて私たちの人生は「長さ」と「深さ」の両方を手に入れることができます。
今度の週末、将来のための勉強を少しだけ早めに切り上げて、今の自分のために少し贅沢な時間の使い方をしてみませんか? それは決して浪費ではなく、未来のあなたへの「配当投資」なのですから。


