『ボッコちゃん』レビュー|あなたの「無駄な時間」が、笑えないブラックジョークに変わる瞬間
「本の変人」ことLow calmです。 あなたは今、「毎日が同じことの繰り返しで退屈だ」「仕事の『無駄』にうんざりしている」「何かスカッとする刺激が欲しい」で、貴重な時間を無駄にしていませんか?
(ああ、わかります。私も毎朝、阿里山紅茶を淹れながら、昨日と同じような給与計算データと就業規則を前に「この作業、10年後もやってるのか?」と虚無になることがありますから)
私、Low calmは、新卒1年目で難病(潰瘍性大腸炎)を宣告され、「人生の時間は有限だ」と痛感した人間です。 だからこそ、「面白くない本」を読む時間ほど「無駄」なものはないと心底憎んでいます。
この記事は、私のような「ぼっち人事労務」でFP2級持ちの「本の変人」が、年間150冊の読書から得た知見に基づき、『ボッコちゃん』が、あなたの「大切な時間」を投資する価値があるかを、忖度なく断言するものです。
結論:この記事は「読む価値」ある?
- こんな気分向け: 退屈な日常に「毒」が欲しい / 人間の愚かさを笑い飛ばしたい / 隙間時間で知的興奮を味わいたい
- 読むと得られるもの: 「常識」を疑う視点 / 極上のブラックユーモア / 5分で完了する「どんでん返し」体験
- Low calmの判定: 「時間投資の価値、大いにアリ」(ただし、読む順番と心構えを間違えるな)
Low calmが「グッときた」ところベスト3
星新一。ショートショートの神様。 あまりに有名すぎて、「小学生の時に読んだ」「国語の教科書で知ってる」と侮って(あなどって)いませんか?
甘い。甘すぎます。 それは例えるなら、『ハイキュー!!』を「ただのバレー漫画」と言うのと同じくらい浅はかです(あれは人生の聖書です)。
大人の、それも私のような「人事労務」や「FP」という、他人の人生と「お金」という生々しい現実に毎日向き合っている人間が読むからこそ、星新一の毒は全身に回ります。
本書『ボッコちゃん』は、著者が自選した50編が詰まった入門書にして最高傑作。 今回は、私の「ぼっち人事」としての経験と、「イヤミス」好きの視点をフル稼働させて、この名著の「本当の恐ろしさ」を3つ、お伝えします。
【第1位】「おーい でてこーい」|人事が最も恐れる「無駄の最終処分場」
「穴」は、我々が捨てた「無駄」を、ただ溜め込んでいるだけかもしれない。
「おーい でてこーい」は、本書の中でも特に有名な一編です。 ある日、村に「なんでも吸い込む底なしの穴」が見つかります。人々は最初こそ恐れますが、やがて核廃棄物、機密書類、ゴミ、果ては犯罪の証拠まで、ありとあらゆる「不要なもの」を穴に捨て始めます。街は綺麗になり、人々は穴の恩恵を享受します。穴はすべてを解決してくれました。……そう、あの日までは。
この物語を読んだ時、私は人事労務担当者として、背筋が凍る思いがしました。
この「穴」、私の会社にもあります。
もちろん物理的な穴ではありません。それは「保留」「先送り」「前例踏襲」という名の「見えない穴」です。
「この非効率な申請フロー、いつか見直そう」 「あの部署とあの部署の軋轢、とりあえず今は触れないでおこう」 「評価制度の歪み、来年の課題にしよう」
ぼっち人事として300人分の「歪み」や「不満」を日々受け止めていると、すべてを真正面から処理することは不可能です。だから、私もこの「穴」に、どれだけの「問題」を投げ込んできたことか。
難病を抱え、自分の「時間」が有限だと知っているからこそ、私は「無駄」を憎んでいます。会社の無駄な会議、無駄な稟議書、無駄な忖度。それらを「穴」に捨てて、目の前の業務を効率化することに快感を覚えていました。
しかし、星新一は冷徹に突きつけます。 「お前が捨てたソレ、本当に消えたと思ってる?」
物語のラスト、あれは、私たちが「無駄だ」「不要だ」と切り捨てた業務や、見て見ぬふりをした人間関係の「ツケ」そのものです。
「効率化」の名の下に切り捨てたコミュニケーションが、数年後に巨大な労務問題として空から降ってくる。 「コストカット」のためにケチった安全管理費が、数年後に取り返しのつかない事故として空から降ってくる。
このショートショートは、たった数ページで、「時間の有限性」を言い訳に「無駄」から目をそむけ続けた人間への、最も恐ろしい警告なのです。
【第2位】「ボッコちゃん」|「ぼっち人事」が毎日見る、人間の愚かな独り言
人間は、中身が空っぽの「鏡」にこそ、本音をぶちまける。
表題作「ボッコちゃん」。 バーの美人店員ボッコちゃんは、実は精巧なロボット。客の言葉をオウム返しする程度の機能しかありません。しかし、客たちは彼女に夢中になります。自分の愚痴を、自慢話を、秘密を、一方的に話し続けます。誰も彼女が「空っぽ」だとは気づかずに。
これを読んで、私は「社内チャット」がフラッシュバックしました。
「ぼっち人事」の私の元には、毎日たくさんの職員からの相談がやってきます。 「上司が評価してくれない」 「給与が仕事内容に見合わない」 「あいつのせいでプロジェクトが失敗した」
私はもちろん、ボッコちゃんのようにオウム返しはしません。人事として、FPとして、問題を整理し、解決策を探ります。
しかし、気づいてしまうのです。 彼らの多くは、私に「解決」を求めていないことを。彼らはただ、自分の不満や正当性を「肯定」してくれる「都合のいい壁」が欲しいだけなのです。
ボッコちゃんに熱を上げ、全財産を注ぎ込もうとする男。彼はボッコちゃんを愛しているのではなく、自分の言葉をただただ反射してくれる「鏡」としてのボッコちゃんを愛しているだけ。
この構図、恐ろしいほど「人間」です。
イヤミス(読後感が最悪なミステリー)が大好物な私にとって、この「救いのなさ」は最高のディナーです。 人間は、自分を映す「鏡」が欲しくてたまらない。それがたとえ「空っぽのロボット」や「ただ聞くだけの人事担当」であっても。
この物語を読んでから、私は面談で「この人は今、私に何を求めているのか? 解決策か? それとも『ボッコちゃん』か?」を冷静に見極めるようになりました。 そして、もし相手が「ボッコちゃん」を求めていると判断したら? ……もちろん、プロの人事として最適な「傾聴」を提供しますよ。美味しい紅茶でも飲みながらね。
【第3位】「生活維持省」|FP2級保持者として戦慄する「究極の社会保障」
「おめでとうございます。あなたは不要と判定されました」
星新一の真骨頂は、ブラックユーモアです。その中でも、私が最も「笑えなかった」のがこの「生活維持省」です。
未来の世界。人口は増えすぎ、資源は枯渇寸前。そこで政府は「生活維持省」を設立します。その仕事は、ランダムに選んだ国民に電話をかけ、「あなたは社会にとって不要と判定されました。つきましては、本日中に毒薬で自決してください」と通告すること。
通告された人々は、驚くほど素直にそれを受け入れます。「わかりました」「ご苦労様です」と。社会の「維持」のためなら、個人の「死」は当然のこととして受け入れられる。
……このドライさ、どこかで感じたことはありませんか? そう、「リストラ」です。
「ぼっち人事」として、私はまだ「肩たたき」の修羅場は経験していません。しかし、もし会社が傾き、整理解雇(リストラ)を断行しなければならない日が来たら? 私は「生活維持省」の職員のように、同僚に「残念ですが、あなたのポジションはなくなりました」と告げなければならないのです。
さらに、私はFP(ファイナンシャル・プランナー)2級の資格を持っています。お金の勉強をすればするほど、この国の「社会保障」の危うさがわかります。 年金は本当に貰えるのか? 健康保険制度は維持できるのか?
星新一が描いた「生活維持省」は、SFではありません。 これは、社会という「全体」を維持するために、いつか「個人」が生贄にされるかもしれない、という現代の寓話です。
もしあなたが「会社のために」「社会のために」という言葉を疑いなく信じているなら、この一編を読んでください。 会社は、社会は、本当にあなたの「時間」と「人生」を守ってくれますか? FPとして、人事として、私は「自分の身(とお金)は自分で守れ」としか言えません。その現実を、このショートショートは半世紀以上も前に描き切っているのです。
どんな人におすすめなのか
✅ おすすめな人(時間を投資すべき人)
- 「知的などんでん返し」を浴びたい、すべての活字中毒者会社や社会の「常識」「当たり前」に、少しだけ疲れている人
- 隙間時間で「知的などんでん返し」を浴びたい、すべての活字中毒者会社や社会の「常識」「当たり前」に、少しだけ疲れている人
- 人間の愚かさや滑稽さを描く「イヤミス」や「ブラックジョーク」が大好物な人
🚫 おすすめしない人(時間を浪費する可能性)
- すべての物語に「感動」や「主人公の成長」を求める人
- すべての物語に「感動」や「主人公の成長」を求める人登場人物への「感情移入」を読書の第一条件にしている人
- 「SF=派手な宇宙戦争や未来ガジェット」を期待している人
Low calmの最適解:どの形式で「時間」を使うべきか?
- 紙(新潮文庫):◎(最適解)
- 理由: これはあなたの「思考のストレッチ」道具になる。5分で読める物語が50編。いつ、どこから読んでもいい。トイレに置くも良し、通勤カバンに入れるも良し。紙で「所有」し、人生の節目節目で読み返すことで、新たな「毒」を発見できる。時間投資効率が最も高い形態です。
- 電子書籍(Kindleなど): ◯
- 理由: FP的にはセールで買うのが最強。いつでもスマホで読めるため、「無駄な待ち時間」を即座に「知的な時間」に変えられます。ただし、星新一の「行間」や「余白」の絶妙な恐ろしさは、紙のページの「めくり」でこそ最大化される、と私は信じています。
- オーディオブック(Audibleなど):△(注意)
- 理由: 「聴く」という行為は、想像力を刺激します。特に『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』のように、映像や音声で楽しむのはアリです。しかし、「読書」としてインプットする場合、星新一のドライで簡潔な文体は、「聴く」よりも「読む(目で追う)」方が、そのブラックなオチのキレ味を鋭く体感できます。
著者のプロフィール、本の詳細
- 著者: 星 新一(ほし しんいち)
- 出版社: 新潮社(新潮文庫)
- 発売日: 1971年5月27日
- ページ数: 352ページ
世間の口コミ(Xや読書メーターから)
とにかく懐かしい✨
— ふわフワ (@42368eba9e14450) November 26, 2024
遠い昔、小学校の学級文庫にあったムチャ有名な作品📖
けど、そのユーモアのある風刺や警鐘は
大きく時代が変わっても、全然色褪せてなくて…
むしろ今の世にこそ読む価値があるとも感じました😌
日々のスキマ時間にちょっと一編…なんて乙ですよね☺️#読了#ボッコちゃん pic.twitter.com/eLoDJqMHmI
その通り。特に「時代が変わっても色褪せない」という点に激しく同意します。子供の頃に感じた「不思議な話」が、社会人になって読むと「笑えない現実」に変わる。この「二度美味しい」感覚こそ、星新一に「時間」を投資する価値です)
まとめ:あなたの「時間」を投資する価値はあるか
私自身、「生活維持省」を読んだ後、自分の担当する「社会保険料」の計算書の数字が、ただの数字ではなく、社会を「維持」するためのコストなのだと、改めて重く受け止めるようになりました。 そして、「おーい でてこーい」を読んでからは、業務の「先送り」という名の「穴」に、怯えるようになりました。
あなたの「時間」は有限です。 もしあなたが今、「退屈な日常」や「会社の無駄」にうんざりしているなら、この一冊に投資する数時間は、あなたの「常識」という名のメガネを、痛快に叩き割ってくれるはずです。
たった5分で、あなたの世界の見方は変わるかもしれません。
まず、目次を見て一番「意味が分からない」タイトルの作品を一つだけ読んでみてください。そして、その「オチ」に戦慄してください。
【最終案内】あなたの「時間」を豊かにする一冊
- タイトル: 『ボッコちゃん』
- 著者: 星 新一

