『君のクイズ』は「ヤラセ」か? 年間150冊読む人事部が暴く、エンタメ小説の「答え」
どうも、Low calm(ロウカーム)です。「本の変人」と呼ばれています。
美味しいアールグレイを片手に活字を浴びるのが生きる糧。本業では、約300人の会社で就業規則と睨み合いながら、孤独な人事労務管理をしています。
このブログのモットーは「あなたの時間を大切にすること」。
私自身、新卒1年目に難病(潰瘍性大腸炎)の宣告を受け、「人生の時間は有限である」と骨身にしみて叩き込まれました。だからこそ、「本選びの失敗」が心底嫌いなのです。
あなたの貴重な時間を無駄にさせない、「失敗しない一冊」との出会いをお手伝いします。
さて、今回あなたの大切な時間を投資してでも読んでほしいと確信したのが、小川哲さんの『君のクイズ』です。
最初に結論を言いましょう。 これは、「答えを知りたい」という人間の根源的な欲求を、根底から揺さぶってくる傑作エンターテイメントであり、極上の「思考のスポーツ」を描いたミステリーです。
📖 この記事でわかること
- 『君のクイズ』が、ただのクイズ小説ではない「ヤバさ」
- 年間150冊読む「本の変人」が、特に心を掴まれた箇所ベスト3
- 人事労務 兼 FP2級の視点で読み解く「真実」の価値
- あなたが本書を読むべきか、それとも時間を無駄にするか
この記事を読み終える頃には、あなたは「情報を知ること」と「真実へ至ること」の違いについて、深く考えさせられているはずです。
☕️ Low calmが選ぶ『君のクイズ』グッときたところベスト3
では早速、私の心が動かされた箇所をランキング形式で紹介します。もちろん、小説の核心に触れるネタバレは一切しません。あなたの「読む時間」を奪う真似はしませんので、ご安心を。
【第3位】「知識」ではなく「思考」で殴り合う、競技クイズの解像度
「クイズ」と聞くと、あなたは「知識のひけらかし」や「暗記合戦」を想像しませんか? 私もそうでした。
しかし、本書が描く「競技クイズ」は、まったくの別物です。それはまるで『ハイキュー!!』の烏野高校が見せるような、超高速の「情報処理と思考のスポーツ」でした。
彼らにとって、問題文は最後まで聞くものではありません。「読む」ものです。
これは、私の本業である人事労務の仕事と驚くほど似ています。
就業規則や労働基準法という「ルール(知識)」を知っているだけでは、現場の問題は何も解決しません。なぜそのルールが生まれたのか(背景)、社員が何を求めているのか(傾向)、会社の現状はどうなっているのか(情報)。それらを瞬時に組み合わせ、最適解という名の「答え」を導き出す思考力が求められます。
ただの「物知り」では通用しない世界。そのヒリヒリするような思考のプロセスが、本書では圧倒的な解像度で描かれています。「知識」ではなく「思考」で戦う格好良さに、まず心を掴まれました。
【第2位】 主人公・三島が直面する「答えを知る」ことへの葛藤
本書の物語は、クイズ番組の生放送中、対戦相手が「まだ一文字も読まれていない問題」に正解するという、あり得ない事件から始まります。
「ヤラセだ」「不正だ」
世間は騒ぎ立て、主人公の三島玲央もまた、その「答え=なぜ彼は正解できたのか?」を知ろうと動き出します。
しかし、真相に近づくにつれ、彼は「本当にそれを知って良いのか」という葛藤に直面します。
この感覚、私には痛いほどわかります。
新卒1年目で難病の告知を受けた時、「自分の体で何が起きているのか」という答え(病名)を知るのが怖かった。知ってしまったら、もう元の自分には戻れないと直感したからです。
人事の仕事でも同様です。 「あの社員、最近元気がないけど、理由を聞くべきか…」 「この給与計算ミス、もし公になったら…」
ブラックジョークに聞こえるかもしれませんが、会社組織とは「知らなくていい真実」や「触れてはいけない答え」で満ち溢れています。それでも私たちは、日々「答え」を探さなくてはならない。
「真実を知りたい」という人間の純粋な欲求と、「知ってしまった後の恐怖」。この相反する感情の描写に、私は深く共感しました。
【第1位】 読者自身が「回答者」にさせられる、ラストの仕掛け
そして、第1位。 これこそが、私が『君のクイズ』を「傑作だ」と断言する理由です。
物語の終盤、主人公・三島がたどり着いた「答え」が提示されます。それは、驚愕の真相でした。
「ああ、そういうことだったのか!」と。 「なんて鮮やかなロジックなんだ!」と。
しかし、本書の本当に恐ろしいところは、その「後」にあります。
読了した瞬間、私は椅子から立ち上がれなくなりました。 「やられた」と。
私たちは、主人公・三島と一緒に「答え」を探す「観客」だったはずです。しかし、最後の最後で、私たち自身が「回答者」として「君のクイズ」の回答席に座らされていたことに気づかされます。
すべてのピースがハマる快感(カタルシス)と、足元が崩れ落ちるような衝撃。 この読書体験こそが、本書に私の貴重な時間を投資した最大の価値でした。
🙋♂️ どんな人におすすめなのか
この本は、万人に勧められる傑作ですが、私の「時間を大切にする」というモットーに基づき、あえて「合う人・合わない人」を明記します。
おすすめな人 3パターン
- 『ハイキュー!!』や『MAJOR』のような「思考するスポーツ漫画」が好きな人
- 本書はミステリーであると同時に、最高のスポーツ小説です。肉体ではなく「脳」で戦うアスリートたちの熱量に、必ずや胸が熱くなるでしょう。
- 伊坂幸太郎作品のような「鮮やかな伏線回収」を求める人
- 物語全体に張り巡らされたロジックが、最後に一本の線として繋がる快感。時間を無駄にしなかったと確信できるエンターテイメントを求める人に最適です。
- 情報や「真実」との向き合い方に、少し疲れている人
- ネットやSNSに溢れる玉石混交の情報。「何が本当なのか?」と疑心暗鬼になっている人にこそ、本書が提示する「答え」は深く刺さるはずです。
おすすめしない人 3パターン
- 難解な純文学や、重厚なSFだけを読みたい人
- 本書は非常にロジカルですが、あくまで「エンターテイメント」として抜群に面白い作品です。文学的な高尚さや哲学的問いだけを求める方には、少し物足りないかもしれません。
- 物事の「答え」を、過程抜きで早く知りたい人
- 「なぜ不正ができたのか?」その答えに至るまでの「思考のプロセス」こそが本書の醍醐味です。ファスト映画のように結論だけを求める人には向きません。
- クイズという題材に、生理的な嫌悪感がある人
- クイズが主題であることは間違いありません。クイズ番組を見るだけで蕁麻疹が出る、という方には、残念ながらおすすめできません。
👤 著者プロフィールと本の詳細
ここで、このとんでもない作品を生み出した著者と、本の詳細について触れておきます。
著者:小川 哲(おがわ さとし)氏
1986年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。 2015年に『ユートロニカのこちら側』でハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。 凄まじいのはその後の受賞歴です。
- 『ゲームの王国』で日本SF大賞、山本周五郎賞。
- 『地図と拳』で山田風太郎賞、そして第168回直木三十五賞。
まさに現代日本文学のトップランナーの一人です。SFで培われた緻密なロジック構築能力と、直木賞級の人間ドラマ描写。この二つが融合したのが『君のクイズ』と言えるでしょう。
📖 本の詳細
- タイトル: 君のクイズ
- 著者: 小川 哲
- 出版社: 朝日新聞出版
- 発売日:
- 単行本:2022年10月7日(192ページ)
- 文庫本:2025年 4月25日(248ページ)
- 備考:
- 第76回日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉受賞
- 2023年本屋大賞 第6位
- 文庫版には、物語のその後を描く短編「僕のクイズ」が収録されています。時間を無駄にしたくないあなたは、追加短編まで読める文庫版をおすすめします。
🏁 まとめ:「答え」を知っても、あなたの人生は続く
最後に、この記事の「答え」をまとめます。
『君のクイズ』は、単なるクイズ番組の不正(ヤラセ)疑惑を追うミステリーではありません。
それは、「知識」ではなく「思考」で戦う(第3位)人々の熱いドラマであり、「答えを知る」ことの恐怖と向き合う(第2位)人間の葛藤の物語です。
そして何より、読み終えた読者自身が「回答者」として「答え」を問われる(第1位)、最高に知的な「体験型」エンターテイメントでした。
正直に告白します。 私は本業で、職員の給与計算を担っています。FP2級の知識を活かし、税金や社会保険料の計算もします。私の仕事は、「1円たりとも間違えてはいけない」世界です。そこには常に「唯一絶対の正解」が存在します。
だからこそ、『君のクイズ』が突きつけてきた「答えは一つかもしれないが、真実は人の数だけある」という感覚に、頭を殴られたような衝撃を受けました。
もしあなたが、日々の生活の中で「正解」ばかりを追い求めることに疲れているなら。 もしあなたが、あなたの貴重な時間を投資するに値する「本物のエンタメ」を探しているなら。
ぜひ、本書を手に取ってください。 そして、著者・小川哲が仕掛けた壮大な「問題文」を読み解き、あなただけの「答え」を見つけてください。
さて、そろそろ給与計算の締め日です。私も「正解」を探す仕事に戻るとしますか。 (その前に、もう一杯だけアールグレイを淹れ直しましょう)
あなたの読書ライフが、失敗しない一冊で豊かになることを願っています。

