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『いけない』道尾秀介|この「違和感」に気づけますか?               

Low Calm
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どうも、Low calm(ロウカーム)です。緑茶を片手に、今日も活字の海を泳いでいます。

突然ですが、あなたは「騙される」ことはお好きですか?

私は「本の変人」を名乗っていますが、本選びでの失敗、つまり「面白くない本に時間を奪われること」は心底嫌いです。新卒1年目に難病(潰瘍性大腸炎)を宣告されて以来、「人生の時間は有限だ」と痛感しているからかもしれません。

だからこそ、私は「騙される」という行為にも二種類あると思っています。 一つは、「時間を無駄にする騙し」。そしてもう一つが、「極上の快感をもたらす騙し」です。

今回ご紹介する道尾秀介さんの『いけない』は、間違いなく後者。イヤミスとミステリーが大好物の私が、「これは!」と確信した「失敗しない一冊」です。

しかし、この本は、ただのミステリーではありません。 あなた自身が「探偵」となり、物語に隠された「違和感」を見つけ出さなければならない、非常にタチの悪い(褒め言葉です)「体験型ミステリー」なのです。

この記事でわかること

「あなたの時間を大切にする」のが私のモットー。長々と前置きはしません。 この記事では、以下のことを「ぼっち人事労務」兼「FP2級持ち」の視点から、正直に、深く掘り下げます。

  • 【結論】この本は「買い」か?
    • イヤミス好き、頭脳パズルが好きな人にとっては「特上のご馳走」。
    • ほっこりしたい、読書でスッキリしたい人にとっては「時間の無駄」。
  • Low calmが選ぶ「グッときた(ゾッとした)ところベスト3」
    • なぜ私がこの本を「極上」と評価するのか、その核心を語ります。
  • 人事労務が見る「人間の怖さ」
    • 人は「見たいもの」しか見ない。それが会社組織や個人の人生にどれほどの影響を与えるか。本書から学んだことを、少々ブラックジョーク風味でお届けします。

この記事を読み終えたとき、あなたは「自分はこの本を読むべきか、読まざるべきか」を100%判断できるようになっています。あなたの貴重な時間を、本書に投資する価値があるか。ぜひ、最後までお付き合いください。


ゾクッとしたところベスト3(ネタバレなし)

年間150冊読む私が、特に「やられた!」と感じた箇所をランキング形式で紹介します。小説なので核心的なネタバレは一切しませんが、この本が持つ「毒」の片鱗を感じ取ってください。

第1位:各章の最後に突きつけられる「一枚の画像」

本書は4つの短編からなる連作ミステリーです。そして最大の特徴は、各章の最後に「写真」や「地図」といった「画像」がたった一枚、差し込まれていること。

これが、本当に「いけない」。

物語を読み終えた時点では、「ふーん、なるほど。こういう話か」と一応の納得はします。しかし、次のページをめくり、その「画像」を見た瞬間、全身の血の気が引くことになります。

「え? ……どういうこと? さっきまで読んでいた物語は、何だったんだ?」

そう、文章中では「真実」が巧妙に隠されています。読者は、その「画像」という名の決定的な証拠を突きつけられて初めて、自分が完璧に騙されていたこと、そして物語の本当の恐ろしさに気づかされるのです。

これは、人事労務の仕事にも通じます。 例えば、職員Aさんと職員Bさんの間にトラブルがあったとします。双方からヒアリングすると、二人の言い分は全く食い違う。どちらも「自分は悪くない」「相手がこう言った」と主張します。

しかし、監視カメラの映像(=画像)や、第三者の客観的な証言(=証拠)が出てきた瞬間、それまでの「物語(=言い分)」がガラガラと崩れ落ちる。どちらかが、あるいは両方が、自分に都合の良い「嘘」や「解釈」をしていたことが白日の下に晒される。

『いけない』は、まさにあの瞬間と同じ。人間の「主観」がいかに曖昧で、恐ろしい「真実」を隠蔽し得るか。それを、エンターテイメントとして見事に昇華させています。この構造的ギミックの巧みさに、私は完全に脱帽しました。

第2位:「平和な町」の仮面の下に隠された「悪意」

この物語の舞台は「蝦蟇倉(がまくら)市」という、一見するとどこにでもありそうな地方都市です。しかし、読み進めるうちに、この町がいかに「いびつ」であるかが分かってきます。

4つの短編は、それぞれ異なる人物の視点で描かれますが、微妙に登場人物や場所がリンクしています。そして、一つの章で「解決した」かのように見えた事件が、別の章では全く異なる「側面」を見せるのです。

「あの事件、まだ終わってなかったのか……」 「この人、前の話に出てきたあの人……?」

点と点が線で繋がり、やがて「蝦蟇倉市」という町の「おぞましい全体像」が浮かび上がってくる構成は、圧巻の一言。

私がFP(ファイナンシャル・プランナー)の資格を取ったのは、「お金」という側面から人の人生を守りたかったからです。老後の不安、家族の生活、そういう「大切なもの」を脅かすリスクに備えるのが私の仕事。

しかし、この本が描くのは、そういう「備え」ではどうにもならない、人間の心の奥底に潜む「悪意」や「狂気」です。 平和な日常は、脆い仮面の上にある。その仮面が剥がれたとき、人はどこまで「いけない」ことをしてしまうのか。

人事労務として、職員の「生活」を預かる給与計算を担当していると、「ミスったら人生が終わる」というプレッシャーを日々感じています。(本当に、毎月の給与明細は血の気が引きます) この本が描く「日常に潜む恐怖」は、そうした私の職業的な緊張感とも共鳴し、背筋を凍らせるには十分すぎるものでした。

第3位:ラスト一行の「突き放し方」

詳細は語れません。語ったら、この本の価値が半減します。 ただ、これだけは言わせてください。

すべてを読み終え、最後の「画像」の謎も解き明かし、「ああ、これで全てがつながった……」と安堵(あるいは絶望)した読者を、著者は容赦無く突き放します

「本当に、それで終わりだと思っているのか?」

とでも言いたげな、最後の仕掛け。 私は紅茶を噴き出しそうになりました。読後感が「最悪」を通り越して「唖然」です。

イヤミスが大好物な私にとって、これ以上の賛辞はありません。スッキリしたい方には絶対におすすめしませんが、「質の悪い悪夢」に溺れたい方には、これ以上ない一冊です。


どんな人におすすめなのか

私のモットーは「あなたの時間を大切にすること」。ミスマッチは最大の時間の無駄です。 FPとして「リスク管理」を学んだ視点から、本書を読むべき人、そうでない人をハッキリと仕分けします。

⭕ おすすめな人(投資すべき人)

  1. 「イヤミス」が大好物な人
    • 湊かなえさんや真梨幸子さんなど、「読後に嫌な気分になりたい」と願う、私と同じ「本の変人」の方。本書はあなたにとって、五つ星レストランのフルコースです。
  2. 自分の「注意力」や「読解力」を試したい人
    • 「著者の仕掛けた罠に気づけるか?」という挑戦状です。謎解きゲームや脱出ゲームが好きな方、あるいは「自分は人より物事の裏側が見える」と自負している方。ぜひ、道尾秀介さんからの挑戦を受けてみてください。
  3. 「人間って怖い」とゾクゾクしたい人
    • 私のように人事労務の仕事などで「人の表と裏」を見過ぎて、性善説を信じられなくなりかけている方(笑)。本書は、そんなあなたの「人間観」をさらに深く、暗い場所へといざなってくれるでしょう。

❌ おすすめしない人(時間を無駄にする可能性が高い人)

  1. 読書に「癒し」や「スッキリ感」を求める人
    • 絶対に読んではいけません。あなたの貴重な時間を奪うことになります。本書には「救い」や「希望」は(ほとんど)ありません。読後は、どんよりと重たい気持ちになることを保証します。
  2. 物事を深く考えず、サラッと読みたい人
    • 本書の仕掛けは、注意深く読み、章末の「画像」と照らし合わせて「考察」して初めて楽しめます。ただ文字を追うだけでは、本当の面白さの1割も理解できず、「結局よくわからなかった」で終わる可能性が非常に高いです。
  3. 「伏線はすべて回収されてこそ美しい」と考える人
    • 本書は、あえて「謎」を残す終わり方をします。読者に解釈を委ねる部分が非常に多い。「白黒ハッキリつけてくれ!」というタイプの方は、多大なストレスを感じるでしょう。

著者プロフィールと本の詳細

著者:道尾 秀介(みちお しゅうすけ)さん

1975年東京都生まれ。2004年『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。 2007年『シャドウ』で第7回本格ミステリ大賞、2009年『カラスの親指』で第62回日本推理作家協会賞、2010年『龍神の雨』で第12回大藪春彦賞、『光媒の花』で第23回山本周五郎賞、2011年『月と蟹』で第144回直木三十五賞を受賞。 (文春文庫『いけない』より)

輝かしい受賞歴。まさに「技巧派」と呼ばれるにふさわしい、ミステリー界の巨匠のお一人です。

本の詳細

  • タイトル: 『いけない』
  • 著者: 道尾 秀介
  • 出版社: 文春文庫
  • 文庫発売日: 2022年8月3日
  • ページ数: 288ページ

『いけない』の口コミ

私のブログでは、Amazonのレビュー(誰もが見るから)ではなく、X(旧Twitter)から読者の「生の声」を拾うことにしています。

……が、今回はあえて省略します

なぜなら、本書に関するXの感想は、「面白かった!」という抽象的なものか、あるいは「核心に触れるネタバレ」を含んでしまっているものが非常に多かったからです。

本書の面白さは、「何も知らないまま読者が騙される」という体験そのものにあります。 あなたの貴重な読書体験という「時間」を守るため、今回は私のレビューだけを信じて(あるいは疑って)、まっさらな状態で本書に挑んでいただくのが最善だと判断しました。

私の「グッときたところベスト3」を読んで心が動いたなら、それがあなたの「読むべき」サインです。


まとめ:あなたの「違和感」は、正しいか?

『いけない』は、ただの「物語」ではありません。 著者が読者に仕掛けた、巧妙な「罠」であり「挑戦状」です。

  1. 各章の最後に突きつけられる「画像」によって、
  2. 一見「平和」に見える町の仮面の下にある狂気を暴き、
  3. 読者を「突き放す」ラストで終わる。

この一連の体験は、まさに「極上の悪夢」でした。

私たちは日常生活で、無意識のうちに多くの「違和感」を無視しています。 人事労務として面談をしていると、「この人、何か隠しているな」と感じる瞬間があります。FPとして家計相談に乗っていると、「この支出、本当に必要ですか?」と問い質したくなる項目があります。

私たちは、自分が見たいものだけを見て、信じたい「物語」を信じて生きている。

『いけない』は、そんな私たちの「思い込み」を根底から覆し、「あなたは、本当に真実が見えていますか?」と問いかけてくる本です。

あなたの「時間を無駄にしない」ために、最後にもう一度だけ。 癒しを求めるなら、今すぐブラウザを閉じてください。 もし、あなたの「注意力」と「常識」が試される、最高にタチの悪い(褒め言葉です)パズルに挑戦したい「本の変人」なら、この一冊は、あなたの時間を最高に豊かに(あるいは最悪に)してくれることを、私が保証します。


いかがでしたでしょうか。 あなたの「失敗しない一冊」選びの参考になれば幸いです。

それでは、また次回の書評でお会いしましょう。Low calmでした。

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