『海辺のカフカ』は難しい? 結論、あなたの「失われた半分」を探す旅です。|年間150冊読む人事が「失敗しない読書」をガイド
こんにちは。「本の変人」こと、Low calm(ロウカーム)です。 美味しいお茶と読書をこよなく愛し、現在は300人規模の会社で就業規則とパソコンを相手に「ぼっち人事労務管理」をしています。
このブログのモットーは、ただ一つ。 「あなたの時間を大切にすること」です。
私自身、新卒1年目で難病(潰瘍性大腸炎)を宣告され、社会人生活がハードモードで始まった経験から、「人生の時間は有限である」と痛感しています。
だからこそ、本選びでの「失敗」が心底嫌いです。 「この本、読むのに時間がかかったけど、何も残らなかったな…」 これほど人生の時間を無駄にする行為はありません。
今回ご紹介するのは、村上春樹氏の『海辺のカフカ』(上・下巻)。 言わずと知れた世界的ベストセラーですが、同時に「難解」「意味がわからない」という声も多く、文庫本で合計1000ページを超える大長編です。
あなたの貴重な時間を、この1000ページに投資すべきか。 年間150冊の本を読む活字中毒者であり、職員の人生(とお金)を預かる人事労務、そしてFP(ファイナンシャル・プランナー)2級の視点から、徹底的にレビューします。
先に結論を言いましょう。
この本は、「分かりやすい答え」を求める人にとっては、壮大な時間の無駄になる可能性があります。
しかし、もしあなたが「今の日常」や「自分自身」に何か説明のつかない欠落感や、ままならなさを感じているなら、この物語はあなたの人生にとって「必要不可欠な1000ページ」になるかもしれません。
📚 この記事でわかること
- 『海辺のカフカ』が「時間の無駄」にならず「人生の投資」になる理由
- 年間150冊読む人事マンが本気で震えた「グッときた」箇所ベスト3
- あなたがこの本を読むべきか、読まないべきか(おすすめな人・しない人)
この記事を最後まで読めば、あなたがこの難解で壮大な物語に、あなたの「大切な時間」を投じるべきか、確かな判断ができるようになるはずです。
衝撃「グッときたところ」ベスト3(ネタバレなし)
1000ページを超える物語の中から、私、Low calmが「これは!」と心を鷲掴みにされた箇所を、あえて3つだけ選びました。 小説ですので、物語の核心に触れるネタバレは一切しません。安心してお読みください。
【第3位】大島さんの「退屈」に関する問い
私の本業である「人事労務管理」こそ、まさに「退屈」と「ミスの許されないプレッシャー」の連続だからです。 毎月の給与計算、社会保険の手続き、就業規則の改定…。どれもこれも、クリエイティブとは程遠い、地道で、正確性がすべて要求される仕事。 「職員の給与を1円でもミスったら人生が終わる」というプレッシャーの中で、日々パソコンの数字とにらめっこです。
正直、「退屈だ」と感じる瞬間は、吐いて捨てるほどあります。 しかし、大島さんの言う通り、この「退屈な」日常こそが、私たちの人生の大部分を占めている。
この本は、「非日常」な冒険譚であると同時に、「退屈な日常」を私たちがどう引き受けて生きていくか、という重い問いを突きつけてきます。 『ハイキュー!!』や『MAJOR』のような熱いスポーツ漫画も大好きですが、それらとは対極にある「静かなる問い」に、私は深く共感しました。
【第2位】ナカタさんの「空っぽ」という強さ
私たちは、常に「何かを得る」ことに必死です。 スキル、知識、お金、キャリア…。 私も「ぼっち人事」のプレッシャーから逃れるため、そして職員の相談に乗りたい一心で、FP2級の資格を取りました。これは「足す」努力です。
しかし、ナカタさんは「空っぽ」です。 「空っぽ」だからこそ、彼は多くのものを受け入れ、常識では考えられないような縁や力を引き寄せます。
人事労務の視点で見れば、ナカタさんは「生産性」や「労働能力」といったモノサシでは到底測れません。現代社会のシステムからは、完全にはみ出してしまっている。 しかし、彼ほど「豊か」で、「強く」、そして「自分の使命」に忠実な人間がいるでしょうか。
私たちは「空っぽ」になることを恐れすぎているのかもしれない。 給与明細の数字や、持っている資格の数だけが、その人の価値ではない。 そんな当たり前で、でも忘れがちなことを、ナカタさんの「空っぽ」な背中が教えてくれました。
【第1位】「君は世界でいちばんタフな15歳の少年になる」
これが、私にとって『海辺のカフカ』のすべてです。
この言葉は、希望に満ちた「激励」ではありません。 むしろ、これから始まる過酷な運命、理不尽な世界に立ち向かうための、唯一無二の「武器」であり、「呪い」であり、そして「祝福」です。
私ごとですが、新卒1年目の春、希望に燃えていた矢先に「潰瘍性大腸炎」という難病を宣告されました。 「なぜ、今?」「なぜ、私が?」 とっくに寛解期に入った今でこそ笑って話せますが、当時は絶望しかありませんでした。
社会人生活ハードモードスタート。 「タフでなければ、この先生きていけない」 そう本気で思いました。
カフカ少年が背負う「呪い」(父からの予言)は、私の経験とは比べ物にならないほど重く、暗いものです。 しかし、彼はその「呪い」から逃げるのではなく、「世界でいちばんタフな少年になる」と決意することで、運命に立ち向かおうとします。
この物語は、理不尽な「呪い」を引き受けて、それでも「タフ」に生きていこうとする、少年の壮絶な戦いの記録です。 そして、それはそのまま、この「ままならない世界」を生きる私たち自身の物語でもあります。
この1000ページの読書は、楽しいエンターテイメントではありません。 カフカ少年と共に傷つき、ナカタさんと共に戸惑いながら、自分自身の「失われた何か」や「見たくない呪い」と向き合う、「タフな読書体験」そのものなのです。
どんな人におすすめなのか
この本は、間違いなく人を選びます。 あなたの貴重な時間を「投資」と「浪費」のどちらにするか、慎重に判断してください。
🙆♂️ おすすめな人(この「旅」に出るべき人)
- 「今の日常」に漠然とした閉塞感や退屈さを感じている人 (第3位で紹介した「退屈さ」に、少しでも思い当たる節があるなら)
- 論理的な「答え」より、メタファー(比喩)や「余白」を楽しめる人 (「これは何の意味があるんだろう?」と考えること自体を、思考のトレーニングとして楽しめる人)
- 自分自身の「失われた何か」や「向き合いたくない過去」と、時間をかけて対峙したい人 (安全な場所から、深淵を覗き見たいという知的好奇心がある人)
🙅 おすすめしない人(「時間の無駄」になる可能性が高い人)
- 「で、結論は?」「要点は3つ」というビジネス書的な「分かりやすさ」を最優先する人 (人事労務の仕事のように、白黒ハッキリさせたい人には苦痛かもしれません)
- 投げ出された伏線がすべて回収されないと、ストレスを感じる人 (イヤミス(後味の悪いミステリー)好きの私でも、この「回収されなさ」は別次元です。これが純文学です)
- 性的な描写や、動物(特に猫)への暴力的な描写に強い不快感を覚える人 (これらの描写は物語の核心に(メタファーとして)関わりますが、受け付けない人には絶対におすすめしません。正直に言って、キツイです)
著者と本の詳細
この壮大な物語を生み出した著者と、本の基本情報です。
著者:村上 春樹(むらかみ はるき)
もはや説明不要かもしれませんが、1949年生まれの日本の小説家です。 1979年『風の歌を聴け』でデビュー以降、『ノルウェイの森』『1Q84』など数々のベストセラーを生み出し、その作品は世界60以上の言語に翻訳されています。 フランツ・カフカ賞やエルサレム賞など受賞多数。毎年のようにノーベル文学賞の有力候補として名前が挙がる、現代日本を代表する作家の一人です。
本の詳細
- タイトル: 『海辺のカフカ』(上・下巻)
- 出版社: 新潮文庫
- 発売日: 2005年9月(文庫版)
- ページ数: 上巻 500ページ / 下巻 530ページ(合計 1030ページ)
- ジャンル: 長編小説、純文学
- メディア化: 故・蜷川幸雄氏の演出により舞台化されています(2012年、2014年など)。
まとめ:あなたの「タフ」な読書体験のために
最後に、『海辺のカフカ』という「タフ」な物語についてまとめます。
この物語で私が最も心を動かされたのは、 「退屈な日常」(大島さん)を引き受け、 「空っぽ」であること(ナカタさん)を恐れず、 「タフである」と決意する(カフカ少年)ことの、 その「強さ」と「切実さ」でした。
読む前の私は、この本を「世界的に有名な、難解で長いだけの純文学」だと、どこか斜めに構えていました。 しかし、1000ページを読み終えた今、これは「難解」なのではなく、私たちの人生がいかに「理不尽」で「ままならない」ものであるかを、ただ誠実に描き切った物語なのだと感じています。
もし、あなたが「おすすめしない人」に当てはまらず、かつ「グッときたところ」に少しでも心がざわついたのなら。 あなたの貴重な時間を、この1000ページの「旅」に投資してみる価値は、間違いなくあります。
ただし、いきなり上下巻セットを購入する必要はありません。 それが「失敗しない」ための鉄則です。 まずは図書館で上巻を借りるか、書店の立ち読みでも構いません。
美味しい紅茶(個人的には、アールグレイがこの物語の雰囲気には合う気がします)を淹れて、最初の数ページを読んでみてください。 そこで「あ、これは合わないな」と感じたら、すぐに本を閉じる勇気を持ちましょう。それがあなたの「時間を大切にする」賢明な選択です。
しかし、もし冒頭の「カラスと呼ばれる少年」の言葉に引き込まれたなら…… ようこそ。 長く、深く、そして「タフ」な読書の旅へ。
あなたの「大切な時間」が、豊かな読書体験で満たされますように。 Low calmでした。

