まだ「AかBか」で消耗してるの?『両立思考』があなたの時間の無駄を終わらせる
仕事か、家庭か。 短期的な利益か、長期的な投資か。 コスト削減か、品質向上か。
私たちの日常は「二者択一」の罠に満ちています。どちらかを選べば、どちらかを失う。この終わらない綱引きに、あなたはどれだけの時間を浪費してきましたか?
「本の変人」として年間150冊を読み、本業では人事労務管理として日々「対立」と向き合う私、Low calm(ロウカーム)が、あなたのその不毛な悩みを終わらせる一冊を断言します。
それが、ウェンディ・スミスとマリアンヌ・ルイスによる『両立思考』です。
最初に結論を言います。 この本は、「AかBか(Either/Or)」という呪いを解き、「AもBも(Both/And)」で物事を進めるための思考OSをインストールする本です。
400ページと分厚く、正直に言えば読みやすい本ではありません。 しかし、この本を読み終える頃には、あなたが「問題だ」と思っていたものの正体が、実は「解決のエネルギー源」であったことに気づくはずです。
この記事では、あなたの時間を大切にするため、私が「時間の無駄だった」と切り捨てなかった理由、つまり本書の核心である「グッときたところ」から先に紹介します。
この記事でわかること
- 「本の変人」Low calmが選んだ、『両立思考』の核心ベスト3
- あなたが「二者択一」の罠から抜け出せない本当の理由
- この本を読むべき人、絶対に読んではいけない人
- 読み終えた後、あなたの思考がどう変化するか
☕ Low calmが選ぶ「グッときたところ」ベスト3
本書は学術的な側面が強く、全体を理解しようとすると時間がかかります。そこで、私が本業(人事労務)の視点からも「これは!」と膝を打った核心部分を、第1位から紹介します。
第1位:「パラドックス」は解決すべき問題ではなく、活用すべき「緊張」である
私たちは、相反する要求(例えば「コストを下げろ」と「品質を上げろ」)に直面すると、それを「問題」と捉え、どちらかを選んで解決しようとします。
しかし、著者たちは断言します。 それは「問題(Problem)」ではなく、「パラドックス(Paradox)」である、と。
これこそが本書の根幹です。 私たちは「白か黒か」をつけたがる。なぜなら、その方が「決断した感」があり、楽だからです。しかし、現実は常にグレーです。
例えば、人事の現場では「社員の自主性を重んじたい(ボトムアップ)」と「会社の戦略を徹底させたい(トップダウン)」という緊張が常に存在します。 択一思考では、「今月は自主性強化月間だ!」と叫んだかと思えば、業績が悪くなると「トップダウンで管理を強化する!」と真逆の指示を出す。これでは現場は疲弊するだけです。
『両立思考』は、その「緊張」こそが健全な状態であり、その緊張関係を維持し続けることこそが、組織や個人を成長させるエネルギー源だと説きます。 「自主性」と「統制」は、どちらかをゼロにするのではなく、「どちらも実現する」道を探す「綱渡り」を続けるしかない。
この本を読んで、私は「対立を解消しなきゃ」という焦りから解放されました。対立はあって当たり前。問題は、その緊張から目をそむけ、「AかBか」の安易な答えに逃げることだったのです。
第2位:「択一思考」が生み出す3つの「悪循環の罠」
では、なぜ私たちは「AかBか」を選んでしまうのか。 本書はそのメカニズムを3つの「罠」として見事に言語化しています。
二者択一のプレッシャーに屈すると、私たちは悪循環に陥る。
- 一点集中:一つの選択肢(例:コスト削減)に集中しすぎ、もう一方(品質)を無視し続け、さらに深みにハマる。
- 矛盾の指示:一つの選択肢で行き詰まると、今度は真逆の選択肢(例:品質至上主義)に振り切れ、組織を混乱させる。
- 組織の派閥:選択肢A派と選択肢B派が対立し、互いに溝を深め、組織が二極化して動けなくなる。
これは、私が会社で何度も見てきた光景そのものでした。 特に「矛盾の指示」は深刻です。 人事として、「成果主義(実力)」と「年功序列(安定)」のバランスを取ろうとするとき、必ずこの2派の「矛盾の指示」が起きます。
「成果主義派」は「安定派」を「ぶら下がり社員」と罵り、「安定派」は「成果主義派」を「自分勝手な拝金主義者」と見下す。 こうなると、もはや「会社を良くする」という目的は消え、「相手の派閥を打ち負かすこと」が目的になります。
本書は、この罠の恐ろしさを明確に示してくれます。 あなたがもし今、「あの上司は短期的な成果ばかりだ(一点集中)」「うちの会社は方針がコロコロ変わる(矛盾の指示)」「営業部と開発部が憎み合っている(組織の派閥)」と感じているなら、その組織は「択一思考」の罠にハマっています。
この「罠」を認識できただけでも、400ページを読んだ価値がありました。
第3位:パラドックスを乗りこなす「綱渡り型」という発想
では、どうすれば「AもBも」実現できるのか。 本書は「ラバ型(両者を統合したハイブリッド案)」と「綱渡り型」の2つを提示しますが、私が特に重要だと感じたのは後者です。
私たちは「仕事と家庭の完璧なバランス」といった完璧なゴールを求めがちです。しかし、そんなものは幻想です。
綱渡りを想像してください。綱渡り師は、棒の上でピタリと静止しているわけではありません。常に右に傾き、左に傾き、その「傾き(非一貫性)」を細かく繰り返すことで、「前に進む(一貫性)」という目的を果たしています。
人事労務の仕事も同じです。 「ルール厳守」と「現場の裁量」。どちらかに振り切ってはいけない。 ある部署では「裁量」を重んじ、別の部署では「ルール」を強調する。同じ部署でも、時期によって重点を変える。 これは「一貫性がない」のではなく、「全体のバランスを取る」という目的のための「一貫した非一貫性」なのです。
「完璧な答えを探す」という時間の無駄な努力をやめ、「常にバランスを取り続ける」という覚悟を持つこと。 この思考法は、本選びで「絶対に失敗したくない(完璧な一冊を求める)」私自身の悩みにも突き刺さりました。「完璧な一冊」などなく、「今の自分に必要な要素」と「今の自分には不要な要素」が同居する本を読みこなし、バランスを取り続けるしかないのです。
🧐 どんな人におすすめなのか
この本は万能ではありません。非常に強力ですが、自分自身で噛み砕いて仕事に活かす必要があります。Low calmの視点で、読むべき人と読んではいけない人を明確に仕分けします。
おすすめな人 3パターン
- 管理職・経営者・リーダー(特に板挟みの人) 「上からは短期利益、現場からは長期投資」を求められる。まさにパラドックスのど真ん中にいる人。本書は、その「板挟み」こそがあなたの価値だと教えてくれます。
- 人事・労務・組織開発の担当者(私と同じ) 「会社の方針」と「社員の感情」、「公平性」と「個別対応」。私たちの仕事はパラドックスそのものです。この本は、あなたの悩みを体系化し、武器を与えてくれます。
- 「AかBか」で悩み、何も決められない人 「転職すべきか、留まるべきか」「結婚すべきか、独身でいるべきか」。人生の大きな決断でフリーズしている人。本書は、「どちらかを選ぶ」以外の第三の道、「どちらも実現する」ための思考法を示してくれます。
おすすめしない人 3パターン
- 「答え」だけが欲しい人 「結局、AとBどっちが正解なんですか?」という思考の人。この本は「どちらも正解であり、どちらも不正解だ」という禅問答のような世界にあなたを連れて行きます。答えをくれない本が嫌いな人には時間の無駄です。
- すぐに使えるテクニック・ノウハウが欲しい人 本書は「思考法」のOSをアップデートする本であり、「明日から使える5つのテクニック」集ではありません。抽象的で学術的な思考が苦手な人には苦痛でしょう。
- 400ページの分厚い本を読む時間がない人 前述の通り、読みやすくはありません。活字中毒者の私でも、理解しながら読むのに時間がかかりました。「失敗しない一冊」を求める私としては、この本は良書ですが、「タイパが悪い本」であることも事実。覚悟して挑んでください。
📚 著者のプロフィール、本の詳細
この本がなぜこれほどまでに強力なのかは、著者たちの経歴を見れば一目瞭然です。
著者について
本書は、この分野の第一人者である二人の経営学者による共著です。
- ウェンディ・スミス(Wendy Smith) デラウェア大学 経営学教授。戦略的パラドックスの研究における世界的権威。その研究は多数の学術賞を受賞しており、まさに「パラドックス研究」のトップランナーです。
- マリアンヌ・ルイス(Marianne W. Lewis) シンシナティ大学リンドナー・ビジネススクール学部長(経営学教授)。ウェンディ・スミス氏と共に、長年パラドックスと両立思考について研究を続けてきた第一人者です。
単なる理論家ではなく、多くの組織やリーダーと対話し、実践的な研究を重ねてきました。本書の重厚さは、その研究の賜物です。
本の詳細
- タイトル: 『両立思考 「二者択一」の思考を手放し、多様な価値を実現するパラドキシカルリーダーシップ』
- 著者: ウェンディ・スミス, マリアンヌ・ルイス
- 監訳: 関口 倫紀, 落合 文四郎, 中村 俊介
- 出版社: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2023年11月1日
- ページ数: 400ページ
目次(本書の構造)
本書の構造を、著作権に配慮しつつLow calmが要約します。本書がどのようなステップで「両立思考」を解説しているか、参考にしてください。
- 序文: なぜ今、「両立思考」が必要なのか
- 第1部: 二者択一の罠 (なぜ私たちは「AかBか」で考えてしまうのか。前述の「悪循環の3つの罠」が解説されるパート)
- 第2部: 両立思考の力 (パラドックスを「問題」から「機会」へと転換する思考法。第3位で紹介した「綱渡り型」などが登場するパート)
- 第3部: 両立思考の実践 (思考法を実践に落とし込むための具体的なツール「ABCDフレームワーク」の解説)
- 第4部: 両立思考で生きる (組織、リーダー、そして個人が「両立思考」をどう人生に取り入れるか)
- 結論: パラドックスを乗りこなす旅
【出典元と参照URL】 本書の詳細や購入は、出版社のサイトやAmazon(https://www.amazon.co.jp/dp/480059150X)などでご確認ください。
✅ まとめ:あなたは「どちらか」を選ぶ時間をもう無駄にしなくていい
最後に、『両立思考』が私に何を教えてくれたのかをまとめます。
私が選んだ「グッときたところベスト3」を思い出してください。
- 「対立」は問題ではなく、エネルギー源であること。
- 「AかBか」の択一思考こそが、対立を悪化させる「罠」であること。
- 「完璧な答え」を探すのではなく、「バランスを取り続ける(綱渡り)」ことこそが唯一の道であること。
これらをつなげると、本書の核心が見えてきます。 それは、「私たちは『AかBか』の呪いによって、対立というエネルギー源を、自ら『問題』にすり替えていただけだ」という事実です。
この本を読む前の私は、人事として「A案(会社)とB案(社員)の対立を、どうC案に着地させるか」ばかり考えていました。 しかし、読後の私は違います。 「A案とB案の緊張関係を、いかに維持し、両方のエネルギーを最大化するか」を考えるようになりました。
C案という「逃げ道」を探すのではなく、AもBも追う。 これは苦しい道です。しかし、この思考法を手に入れた今、二者択一で悩んでいた時間が、いかに無駄だったかを痛感しています。
明日からのアクションプラン
もしあなたが本書に挑む覚悟ができたなら、まずはこう自問してください。
「今、自分が抱えている最大の『AかBか』の悩みは何か?」
それを紙に書き出してください。 そして、本書を読みながら、「AかBか」ではなく、「AもBも」実現する方法を、無理やりにでも考えてみるのです。
その思考のトレーニングこそが、あなたの「時間の無駄」を終わらせる第一歩となるはずです。
この記事が、あなたにとって「失敗しない一冊」と出会う手助けになれば幸いです。
Low calm(ロウカーム)でした。

