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ミステリー
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『爆弾』(呉勝浩) ネタバレなし感想。あなたの時間を無駄にしない、究極の「イヤミス」体験。

Low Calm
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はじめまして、Low calm(ロウカーム)です。 美味しいお茶を淹れ、ひたすら本の世界に浸る時間を愛する、自称「本の変人」です。

このブログでは、純文学、ミステリ、ビジネス書から流行りの本まで、私が「これは!」と確信した良書だけを厳選して紹介します。

なぜなら、私自身が「本選びの失敗」を心底嫌っているからです。

「読みたい本は山ほどあるのに、どれから読めばいいか分からない…」 「せっかくの大切な時間、つまらない本で絶対に無駄にしたくない!」

このブログのモットーは、「あなたの時間を大切にすること」。 あなたが「失敗しない一冊」と出会うためのお手伝いをします。 どうぞ、お茶でも飲みながら、ごゆっくり。


さて、今回ご紹介する本は、まさに「時間の無駄」とは対極にある一冊。 あなたの読書時間を、一瞬たりとも無駄にさせない「濃密な絶望」が詰まった傑作、呉勝浩さんの『爆弾』です。

正直に申し上げます。 私は年間150冊ほど本を読み、特に「イヤミス(読んだ後に嫌な気分になるミステリ)」を好んでいますが、この作品の息苦しさは別格でした。

読み終えた後、溜息と疲労感でしばらく動けなくなりました。しかし、不思議なことに、その疲労感こそが「とんでもない傑作を読んでしまった」という満足感に繋がったのです。

あなたの貴重な時間を投下する価値があるか、じっくりとご判断ください。


1.リード文

この記事でわかること

この記事では、呉勝浩さんの『爆弾』がなぜ「究極の傑作」と呼ばれるのか、その魅力をネタバレ一切なしで徹底的に解剖します。

本記事の信頼性

本ブログの管理人である私(Low calm)は、年間150冊の読書家であり、特に後味の悪い「イヤミス」をこよなく愛しています。 普段は会社員として人事労務管理という「人の感情」を扱う仕事をしているためか、人間の悪意や極限状態の心理描写には人一倍敏感です。 そんな私が、「これは本物だ」と確信した一冊として、本作の凄みをお伝えします。

何が書かれた記事なのか

この記事は、『爆弾』のあらすじ(核心には触れません)を紹介しつつ、私が特に「心を抉られた」ポイントを3つに絞って深掘りします。 また、どのような人にこの本がおすすめで、逆にどのような人にはおすすめできないかを、私の「失敗したくない」という視点からハッキリと提示します。

この記事を読むとどうなるのか

この記事を読み終える頃には、あなたが『爆弾』を読むべきかどうか、その答えが明確になっています。 もし「自分に合いそうだ」と感じたなら、あなたは「絶対に時間を無駄にしない、最高に息苦しい読書体験」への片道切符を手にすることになります。


2.グッときたところベスト3

私が『爆弾』を読んで、文字通り「息が止まった」瞬間、心を鷲掴みにされたポイントを3つ、厳選してご紹介します。

1位:読者の倫理観を破壊する「ゲーム」のルール設定

物語は、渋谷の街中で男が「俺が爆弾魔だ」と名乗り出るところから始まります。 しかし、この犯人・タゴサクが提示する「ゲーム」のルールが、常軌を逸しているのです。

「スイッチは、俺の心臓だ」

警察官に囲まれた犯人は、自分のスマートフォンを掲げて言います。 そのスマホには、彼自身の心拍数を計測するアプリが起動しています。

もし、警察が彼を射殺したり、あるいは彼が持病の心臓発作で死んだりして、その心拍が停止すれば、即座に都内数カ所に仕掛けられた爆弾が爆発するというのです。

これこそが、本作の最大の「グッときた」ポイントです。

警察は、爆弾魔を目の前にしていながら、手が出せません。 犯人を「生かし続けなければならない」のです。 犯人の命が、人質の命と直結している。この一点だけで、通常のミステリや警察小説の前提がすべて覆されます。

私たちは物語を読む際、無意識に「警察(正義)が犯人(悪)を捕まえる」という構図を期待します。 しかし、本作ではその「正義の実行」が「最悪の悲劇」の引き金になる。 この圧倒的なジレンマと絶望的な設定。 ページをめくる手がこれほど重く感じたミステリは、久しぶりでした。

2位:逃げ場のない「リアルタイム進行」の臨場感

本書は、章立てが「午後二時四十分」「午後三時十分」といったように、現実の時間経過で区切られています。 物語は、犯人が名乗り出てから、次なる爆弾の爆発予告時刻まで、ほぼリアルタイムで進行します。

これが、とんでもない緊張感を生み出します。

ページをめくる私たち読者も、警察官たちとまったく同じ時間軸で、刻一刻と迫るタイムリミットに追われることになります。 情報が錯綜(さくそう)し、焦りが焦りを呼び、極限状態に追い込まれた捜査員たちの姿が、生々しく描かれます。

私は普段、人事労務の仕事で、時に緊迫した労使交渉やトラブル対応にあたることがあります。もちろん、本作のような命のやり取りとは比較になりませんが、「限られた時間の中で最善(あるいは最悪を回避する)の決断を迫られる」というプレッシャーの質感は、少し理解できるつもりです。

しかし、本作が描くプレッシャーは、その比ではありません。 「間に合わなかったらどうしよう」という恐怖。 「自分のこの判断が、すべてを終わらせてしまうかもしれない」という重圧。

読んでいるだけなのに、自分まで現場の指揮官室に放り込まれたような錯覚に陥り、手のひらに汗が滲(にじ)みました。 本を閉じても、物語の中の時計は止まってくれない。そんな強迫観念に駆られ、一気読みさせられました。

3位:「正義」と「正義」がぶつかり合う、救いのない人間ドラマ

これが「イヤミス」を愛する私にとって、最も「グッときた」部分です。

犯人のタゴサクは、なぜこんなテロを起こしたのか。 彼には彼の「動機」と「理屈」があります。 一方で、市民の命を守ろうとする警察にも、彼らの「正義」があります。

しかし、この物語では、そのどちらの「正義」も、私たち読者をスッキリさせてくれません。

犯人の理屈に共感はできなくとも、その背景にある「何か」を無視することもできない。 警察の行動を応援したいのに、時に彼らが見せる「組織の論理」や「焦りからくる過ち」に、私たちは眉をひそめてしまう。

「いったい、何が正しいのか?」 「自分がこの立場だったら、どうする?」

物語は終始、私たち読者の倫理観や正義感を、力ずくで揺さぶり続けます。 勧善懲悪(かんぜんちょうあく)の分かりやすい物語を求めている人にとっては、苦痛ですらあるでしょう。

しかし、この「割り切れない重さ」こそが、純文学にも通じる本作の魅力です。 読み終えた後、簡単な答えを出させてくれない。 だからこそ、この物語は単なるエンターテイメントを超え、私たちの心に深く突き刺さるのです。


3.どんな人におすすめなのか

この本は、間違いなく「人を選ぶ」作品です。 私のモットーである「あなたの時間を大切にすること」に基づき、どのような人に合い、どのような人に合わないか、ハッキリと申し上げます。

【特におすすめしたい人】

  1. 後味の悪い「イヤミス」が大好物な人 湊かなえさんや、真梨幸子さん、沼田まほかるさんの作品が好きな人なら、間違いなく「刺さります」。本作は、その中でもトップクラスの「後味の悪さ」と「重さ」を提供してくれます。
  2. 息もつけないほどの緊張感を味わいたい人 映画『セブン』や『スピード』、海外ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のような、タイムリミット系のスリルが好きな人。本作は「読む『24』」と言っても過言ではないほどの緊迫感が、最初から最後まで持続します。
  3. 「正義とは何か」を深く考えさせられたい人 「犯人を捕まえて終わり」という単純な物語では満足できない、知的好奇心の強い人。人間の複雑な心理や、社会の矛盾を鋭く突いた作品を求めている人には、これ以上ない一冊です。

【おすすめしない人(時間を無駄にしてしまう可能性)】

  1. 読書に「癒し」や「スッキリ感」を求めている人 絶対に読まないでください。本作には癒し要素はゼロです。読み終えた後は、スッキリするどころか、重い疲労感とやりきれなさが残ります。貴重な休日の夜に読むと、気分が沈む可能性があります。
  2. 登場人物に感情移入して楽しみたい人 本作の登場人物は、極限状態ゆえに、誰もがエゴや弱さを露呈(ろてい)します。「この人を応援したい!」と心から思えるような、清廉潔白(せいれんけっぱく)なヒーローは登場しません。
  3. 暴力的な描写や、胸が苦しくなる展開が苦手な人 直接的なグロテスクな描写は多くありませんが、心理的な圧迫感、追い詰められていく人々の描写は、読んでいて非常に「しんどい」です。精神的に疲れている時には、手に取らない方が賢明です。

4.目次、著者のプロフィール、本の詳細

目次

本作は、一般的な小説のような章タイトルではなく、事件発生からの「時間経過」そのものが目次となっています。

(例) 午後二時四十分 午後三時十分 午後三時五十分 (中略) 午後六時五十分 午後七時二十分

(出典:講談社文庫『爆弾』実物より)

この構成が、前述した「リアルタイム進行」の緊迫感を、視覚的にも高めています。


著者のプロフィール

呉 勝浩(ご かつひろ) 1981年、青森県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業。 2015年、『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。 2018年に『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞。 2020年に『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞、第73回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)をダブル受賞。 そして2022年、本作『爆弾』が第19回本屋大賞で第2位に選ばれるなど、今最も注目されているミステリ作家の一人です。 緻密なプロットと、人間の暗部を抉(えぐ)り出すような作風に定評があります。

本の詳細

  • タイトル: 爆弾
  • 著者: 呉 勝浩
  • 出版社: 講談社文庫
  • ページ数: 432ページ
  • 発売日: 2022年4月15日(文庫版)

5.口コミ

Amazonのレビューは誰もが見られるため、ここではTwitter(現X)から、より「生々しい」感想を集めてみました。

良い口コミ

「『爆弾』読了。これはすごい。読み始めから終わりまで、ずっと心臓を掴まれているような圧迫感。文字通りジェットコースター。疲れた…でも最高。今年のベスト級」

「呉勝浩『爆弾』。設定がまずエグい。警察側の焦燥感が伝わりすぎて、読んでるこっちが吐きそうになった。イヤミス好きは絶対に読むべき。でも人に軽々しくは薦められない重さ(笑)」

「一気読み。本当に息つく暇がなかった。ページをめくる手が止まらないって、こういう本のことを言うんだな。読後感は最悪。でも、それがいい」

悪い口コミ(というより、警告)

「『爆弾』読んだけど、しんどすぎて無理だった。もう二度と読み返したくない。気分が落ち込んでる時に読む本じゃなかった。スッキリしたい人には絶対向かない」

「あまりに胸糞(むなくそ)悪くて、途中で読むのをやめようかと思った。最後まで読んだけど、救いがなさすぎる。人を選ぶなんてもんじゃない。これは劇薬」

Twtter上でも、面白い」「傑作」という評価と、「しんどい」「最悪(褒め言葉として)」という評価が、ほぼセットで語られています。 このことからも、本作が「圧倒的な面白さ」と「強烈な精神的負荷」を両立させた、稀有(けう)な作品であることが伺えます。


6.まとめ

最後に、あらためて『爆弾』という作品が何だったのかを振り返ります。

私が選んだ「グッときたところベスト3」

  1. 読者の倫理観を破壊する「ゲーム」のルール設定
  2. 逃げ場のない「リアルタイム進行」の臨場感
  3. 「正義」と「正義」がぶつかり合う、救いのない人間ドラマ

これらをつなげてみると、本作の核心が見えてきます。 『爆弾』とは、「タイムリミット付きの絶望的な状況(ルール)下で、不完全な人間たち(ドラマ)が、それぞれの信じる正義をぶつけ合う様を、リアルタイムで目撃させる(臨場感)ドキュメンタリー」なのです。

本を読んでどう変わったのか(ビフォー・アフター)

  • 読む前(ビフォー) 私は、自分を「かなりのイヤミス耐性がある読者」だと思っていました。多少の胸糞展開では動じない自信がありました。
  • 読んだ後(アフター) 見事にその自信を打ち砕かれました。本作が突きつけてくる「正義の不確かさ」と「極限状態の焦り」は、私の想像を遥かに超えていました。「面白い」と「しんどい」は両立するのだと、痛感させられました。

あなたへの具体的なアクションプラン

もし、あなたが「最近、マンネリな読書が続いているな」「心を揺さぶられるような、強烈な刺激が欲しい」と感じているなら、今すぐこの『爆弾』を手に取ってください。

ただし、約束してください。 読むときは、一人の時間と、読了後にどっぷりと疲労感に浸るための「余白の時間」を確保すること。 中途半端な気持ちで手を出すと、あなた自身の日常が、この物語の緊迫感に侵食されてしまいます。

これは、あなたの「大切な時間」を、最高に濃密で、最高に息苦しいものに変えてくれる、失敗しようのない「劇薬」です。




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